出版社内容情報
一一三〇万もの不法移民が存在するアメリカ。彼らはどんな人たちなのか? その答えを知るために著者は二年間、彼らとともに働く――強制送還の危険におびえながら、劣悪な環境で逞しく生きる不法移民たちの素顔。
内容説明
「不法移民の強制送還」を唱えるトランプ政権のアメリカには、一一三〇万もの不法移民が存在する。しかし、彼らはどんな人間なのか?その答えを知るために著者は二年間、彼らとともに働いた―強制送還される危険性におびえながら、母国への仕送りのため路上で仕事を探し、劣悪な環境でも逞しく生きる不法移民の素顔。
目次
第1章 住宅街の職場
第2章 日雇い労働の稼ぎ
第3章 切り離される家族
第4章 快楽と暴力
第5章 収監後の日常
第6章 刑罰国家を生きる
著者等紹介
田中研之輔[タナカケンノスケ]
1976年生まれ。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科単位取得退学、日本学術振興会特別研究員、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校での客員研究員などを経て、法政大学キャリアデザイン学部准教授、デジタルハリウッド大学客員准教授、株式会社ゲイト社外顧問。専門は社会学、エスノグラフィー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
90
体を張ったエスノグラフィーを重視する作者が実際にハースト通りのメキシコからの不法移民達と過ごした日々。誇り高い者、乱暴者、優しい者、ひょんきん者など、不法移民も十人十色。でも彼らを取り巻く現状はますます、厳しくなっている。初めに作者が裕福な身分のエスニックとして警戒された事とい事や不法移民達が若い世代の黒人達から暴力を振るわれるという事で浮かび上がるアメリカ社会の人種構造に息を呑む。そして家族に仕送りする筈でアメリカに来たのに仕事が得られるか、分からない状況を恥じて家族との連絡を断つ父親達の姿も辛すぎる。2018/01/16
どんぐり
65
アメリカで暮らす不法移民のエスノグラフィック・ルポルタージュ。2016年現在、アメリカで生活をする不法移民は約1130万人。その約半数を占めるのがメキシコの585万人で、その他の中南米系を挙げるとエルサルバドル70万人、グアテマラ53万人、ホンジュラス35万人と続く。著者はカリフォルニア大学のバークレー校で研究員と過ごすなかで、彼ら中南米の男たちとともに2年間にわたり路上での仕事待ちの立ちん坊を行い日雇い労働者のフィールドワークに入っていく。これは不法移民がアメリカにどのように入国し、仕事をし、生活をして2018/02/12
おかむら
37
著者はルポライターじゃなくて社会学者。不法移民の実態を観察やアンケートやインタビューといった無難な方法でなく、中に飛び込み一緒に働くというワイルドな方法で研究。ルポルタージュ風なので岩波新書だけど読みやすい。そしてなんかカッコいい。アメリカの寄せ場ってこんな感じかー。入ってみないとわからないことあるわー。2018/01/19
白玉あずき
32
「エスノグラフィック・ルポルタージュ」という社会学の調査手法について初めて知った。これは「未開部族」と生活を共にする人類学の研究手法の流れ。生活を共にすることで、研究者の世界観の組直しが可能となるのだが、今回のような明らかに被差別的立場の人々への感情的な配慮や、倫理的問題はどう考えれば良いのか。著者も内心迷いがあるようだが、少しは社会的統合の一助になれば良いと切に思う。第6章で、ヨーロッパの「社会的排除論」、アメリカの「社会的周縁層」理論について簡単にまとめてあり、これが大変わかりやすい。2018/01/26
kawa
27
著者自ら不法移民とともに働きながら、その実態をルポする。治安悪化、テロ事件の潜在的なリスク要因、さらには福祉予算の増等が生ずると問題視されている不法移民だが、そのようなステレオイメージを覆する内容、興味深く読了。社会学者としての著者、このルポからどのような業績をものにするか注目。2018/03/25