出版社内容情報
最低でも一万人いるとされる無戸籍者。明治からの民法の壁や貧困などで出生届が出されないことがその原因だ。しかし、戦争や災害で戸籍が大量滅失すれば誰でも無戸籍となる。国民を規定する戸籍制度のもろさを、無戸籍の歴史と多くの事例から考察する。
内容説明
少なくとも一万人は存在するとされる日本の無戸籍者。嫡出規定や女性の再婚禁止期間など明治からの民法の壁に加え、貧困などで出生届が出されないことがその原因だ。しかし、戦争や災害による戸籍の大量滅失はいつ誰にでも起こりうる。国民を規定し、また排除する戸籍制度がいかにもろく曖昧か、歴史と多くの事例から考察する。
目次
第1章 「無戸籍問題」とは何か
第2章 「法律」という壁
第3章 「戸籍」とは何か
第4章 消えた戸籍を追って
第5章 グローバリゼーションと戸籍
第6章 「戸籍」がなくなる日
著者等紹介
井戸まさえ[イドマサエ]
1965年生まれ。東京女子大学卒業。松下政経塾9期生、5児の母。東洋経済新報社記者を経て、経済ジャーナリストとして独立。兵庫県議会議員(2期)、衆議院議員(1期)、NPO法人「親子法改正研究会」代表理事、「民法772条による無戸籍児家族の会」代表として無戸籍問題、特別養子縁組など、法の狭間で苦しむ人々の支援を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
85
変化していく時代の中で戸籍制度が如何に時代遅れで脆いかを説いた新書。日本の無戸籍者の中には多国籍民や日系人、戦争によって戸籍を失い、戦後のどさくさに他人の戸籍を使ったり、取り残されてしまった国の民になった者もいる。そして蓮舫氏の二重国籍問題が取り沙汰された時の批判が分からなかった時、その問題の根深さに気付かなかった無知を恥じる。DVや貧困から逃げて子供のために戸籍を取ろうとしても金がなければ、「法テラス」に頼っても更なる重荷になるという現実に暗澹となる。しかし、皇族に戸籍が適用されないという事実に驚いた。2018/02/03
あすなろ
79
戸籍とマイナンバーと住民票。さて戸籍にはどんな意味があるか?戸籍程長い歴史を持つものはない。平安〜戦国〜江戸時代〜明治新政府〜戦後〜東日本大震災以後。様々な天変地異・政治に翻弄されてきた戸籍。実に色々な示唆に富む変遷を盛り込んだ一冊。韓国・台湾では戸籍制度は既に廃止。一方で東日本大震災において消失の危機が取り沙汰され、それでも担当者果ては時の大臣迄その存在確保と取扱・復旧に心血注いだ戸籍。戸籍に関する研究は著者によると僅少とのことだが、近い大震災やマイナンバーから我々は我妻榮の様に真剣に考える必要がある。2018/03/11
キムチ
58
現代日本の女性の立ち位置を正面から切り付けている。無国籍者という言葉を表層的にしか知らなかったこともあり手に取ったが、史的分析が勉強になった。最近では大半が知っている事実~国政の中における女性の地位の低さは世界の中で100位以下にある・・アフリカのある国よりも低い。と言いつつも、一見はつらつと生活している女性たち。だが一歩深みにはまってしまうと法律はあなたが思うほど守ってくれない事実に愕然とする。妊娠300日ルール、「国が父を決める」と定められていた長い時間…2018/02/05
てつ
49
面白く読ませてもらいました。無戸籍をテーマに戸籍制度の問題点を洗い出した良書。ただ、実務上の問題点である、相続制度、との関連がほぼ語られていないのはざんねん。2017/10/29
ゆう。
39
無国籍であることによる国や社会からの差別的な対応は、とても深刻だと思いました。マイノリティや女性への差別は、そのもとで暮らしている子どもの将来も奪います。日本人にとって戸籍とは何かを問い続ける本著は、日本人であることのアイデンティティを戸籍に求めることの矛盾を明らかにしたようにも思いました。2018/06/10