出版社内容情報
「今世紀最悪の人道危機」と言われ幾多の難民を生み出しているシリア内戦。「独裁」政権、「反体制派」、イスラーム国、そしてアメリカ、ロシア……様々な思惑が入り乱れるなか、シリアはいま「終わりの始まり」を迎えようとしている。なぜ、かくも凄惨な事態が生じたのか。複雑な中東の地政学をわかりやすく読み解く。
内容説明
「今世紀最悪の人道危機」と言われ幾多の難民を生み出しているシリア内戦。「独裁」政権、「反体制派」、イスラーム国、そして米国、ロシア…様々な思惑が入り乱れるなか、シリアはいま「終わりの始まり」を迎えようとしている。なぜ、かくも凄惨な事態が生じたのか。複雑な中東の地政学を読み解く。
目次
第1章 シリアをめぐる地政学
第2章 「独裁政権」の素顔
第3章 「人権」からの逸脱
第4章 「反体制派」のスペクトラ
第5章 シリアの友グループの多重基準
第6章 真の「ゲーム・チェンジャー」
著者等紹介
青山弘之[アオヤマヒロユキ]
1968年東京生まれ。東京外国語大学アラビア語学科卒業、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。ダマスカス・フランス・アラブ研究所(現フランス中東研究所)共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員などを経て、東京外国語大学総合国際学研究院教授。専攻は現代東アラブ政治、思想、歴史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
40
アラブの春をきっかけとするシリアの混乱は10年を超えた。本書は、その概要をダイジェストするが、一読してよく解らず混乱する複雑ぶり。「おわりに」で筆者が述べる「『内戦』であったはずのシリア内戦における混乱の再生産しているのは、シリアにとっての異質な部外者であり、シリアの人々は彼らが繰り広げるゲームの駒になりさがってしまった」が、現状の結論だろうと思うのだが、その解決策は全く霧の中で、世界の不条理が凝縮されているような有様だ。2021/10/11
おさむ
38
アラブの春を経験しながら体制が転覆しなかったアサド政権。米国やロシア、欧州諸国などいずれの国も自国の利益の観点から、「戦争なし、平和なし」という微妙な均衡状態を目指しているという複雑な情勢だけにわかりやすく説明するのは難しいのでしょう。なんだか余計に混乱しただけでした。正直悪書です。ただ、そもそも利害関係がモザイク状に入り乱れているシリア内戦。乱暴に換言するとすれば、幕末の日本の情勢を当時の海外から分析解説しようとしたら、こんな感じになるのかも笑。2018/01/01
Francis
22
もはや何が何だかわからなくなったシリア情勢を知ろうと思って手に取った本。結論から言えばこの本は客観的に書かれていて信用のおける本。シリアのアサド政権が西側諸国や「反体制派」が批判するような過酷な支配者だったのか、シリアの「反体制派」はシリアの人々が求めていた民主化を実現出来る能力のある組織だったのか、なぜ西側諸国やロシア、そしてトルコなどの周辺諸国がシリアの政権側・反体制派を支援したのか、などが分かる。とは言え反体制派の組織の名称や各政治勢力の関係は複雑で完全な理解に至るのはなかなか難しい部分はある。2018/05/14
skunk_c
21
中東、特にシリアを専門とする著者による情勢分析。私情を廃し極めて冷静・客観的に記述されており、その多様性・複雑さを丁寧に説明している。それは「三つどもえ」等という単純なものではなく、関わり合う大国や周辺国の様々な思惑と、アサド政権、反アサド派、イスラーム国、クルド人勢力の利害が重層的に絡み合い、状況に応じてその組み合わせすら変わっている。最近はロシアがイニシアチヴを握り、トルコとの接近も果たし、アサド政権も勢力を戻したとのことだが、サリン疑惑によるアメリカの空爆がどう作用するか、事態は依然として流動的だ。2017/04/10
にしがき
11
👍👍👍 長年シリアを研究している著者の新書。積読で刊行は2017年3月。概ね時系列に、アサド政権や反体制派、外国の介入といった括りで整理してシリア内戦を説明している。纏まっているが、複雑。組織間の統合や分離、個人レベルの離反、欧米の一貫性のない介入…。どのレベルでも、自分の勢力が増すように、自分に害が及ばないように、対立勢力が力を持たないように という行動原理のため、出口が見えなくなっている。/著者はあえて冷静に書いているが、はじめに と おわりに で見せるシリアの人々への思いに胸を打たれる。2021/04/29