出版社内容情報
詩、短歌、童謡、童話。様々な名作を残した近代文学の巨匠の全貌を辿り、広大な言語宇宙の秘密に迫る。
内容説明
「待ちぼうけ」「この道」などの童謡、『桐の花』『雲母集』に代表される短歌、象徴詩の粋たる『邪宗門』から円熟期の『水墨集』まで、様々なジャンルで名作を残し、その名を知らぬ人のない近代文学の巨匠、北原白秋。一面のみ取り上げられることの多かった作家の全貌を辿り、他に類のない広大な言語宇宙の秘密に迫る。
目次
第1章 油屋のTONKA JOHN
第2章 『邪宗門』前夜
第3章 『邪宗門』―言葉のサラド
第4章 『桐の花』のころ―君かへす朝の舗石さくさくと
第5章 光を求めて―三浦三崎、小笠原への巡礼行
第6章 葛飾での生活
第7章 童謡の世界―雨が降ります。雨が降る。
第8章 言葉の魔術師―詩集『海豹と雲』と歌集『白南風』
第9章 少国民詩集―この道を僕は行くのだ
著者等紹介
今野真二[コンノシンジ]
1958年神奈川県生まれ。1986年早稲田大学大学院博士課程後期退学。高知大学助教授を経て、清泉女子大学教授。専攻、日本語学。著書に『仮名表記論攷』(清文堂出版、第30回金田一京助博士記念賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
76
白秋を攻めようとして読んでみたが少し難しい。”すばらしい詩は辞書をくる苦しみから生まれるものだよ”と肩が割れるように痛むまで徹夜で辞書をくる白秋を知れたところだけでも満足である。2018/05/08
kaizen@名古屋de朝活読書会
38
#北原白秋 #短歌 #やや黄なる風景 梧桐(あをぎり)のふふめる花の穂に立てば二階も暑し窓は開け置く 日は午(ご)なり靄たちこむる向う空にカキ色の気球熱しきりたる 午(ひる)の坂黄なるドレスののぼりゐて電柱の陰が彎(ゆが)みたり見ゆ #返歌 短歌集 #いろとりどり に詠み込んだ黄柿白秋仲間になろう 2017/03/20
かふ
20
北原白秋の詩歴を丁寧に読み解釈する。いろいろな批評が紹介されて読みにくいのだか白秋が姦淫罪によって地に落ち(バンの会の詩が発禁とされた、このバンはギリシャ神話の天使)堕天使として改心していくのだが、小笠原の自然の中の光が転機だったようでそれ以後は共同体の中で翼賛化していく。白秋は南蛮趣味の自由詩から短歌、童謡詩と変化していくがそれは思想よりも歌心であり、その中で声というものを重要視する。それは総ルビ化として意味よりもコトバの響きをを重視したのだ。ここでも教育の大切さが述べられている。2025/08/23
浅香山三郎
11
童謡・短歌・詩などのジャンルに大きな足跡を遺した白秋の仕事を論じる。その前提は、作品に示された内容を彼の実人生の即物的反映と読むのではなく、一度白秋自身によつて消化され、形式によつて一つの体験が異なる発露を生むとみる見方である。たとへば「城ヶ島の雨」を生む体験はまた違つた形(詩と短歌)でも発表されてをり、その美意識は装幀やルビなどにも行き渡る。モダンな事象をその感性により象徴詩に変ヘ、童謡になることで白秋作品は人口に膾炙するが、その耽美的な作風は少国民詩集といふ形で戦意高揚にも作用した。今野さんの本は↓2021/09/28
oooともろー
4
言葉の持つイメージの広がり。白秋と読者のぶつかり合い。2017/05/25