出版社内容情報
浮き世の様々な出来事を古今の俳句を通じて描く。練達の筆に近年の世相が鮮やかに浮かぶ珠玉のエッセイ。
内容説明
祭りに相撲、友人の死、敗戦の記憶、そして大震災―。浮き世の様々な出来事を、武玉川から子規、漱石や荷風、万太郎、現在活躍中の俳人まで、古今の俳句を通じて描く。時に鋭く怒り、時に呵々大笑。名吟佳吟を引きつつしなやかに世を斬る練達の筆に、近年の世相が鮮やかに浮かび、俳句というものの魅力を改めて感じさせる。
目次
1 神田川祭の中をながれけり 二〇一〇年四月~二〇一一年三月
2 津浪の町の揃ふ命日 二〇一一年四月~十二月
3 風船爆弾放流地跡苦蓬 二〇一二年一月~十二月
4 万緑の中や吾子の歯生え初むる 二〇一三年一月~十二月
5 好きなものは玻璃薔薇雨駅指春雷 二〇一四年一月~十二月
6 様々な人が通つて日が暮れる 二〇一五年一月~十二月
7 天狗住んで斧入らしめず木の茂り 二〇一六年一月~十月
著者等紹介
小沢信男[オザワノブオ]
1927年東京新橋生まれ。作家。日本大学芸術学部卒業。大学在学中、「江古田文学」掲載の「新東京感傷散歩」を花田清輝に認められ、新日本文学会に入会。以後、小説、詩、俳句、評論、ルポルタージュなど多ジャンルにわたる執筆活動を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
123
小沢さんが「月刊みすず」の表紙裏の1ページに毎号書かれていた俳句エッセイをまとめて岩波新書にして出されたものです。「月刊みすず」だとほかの記事が木になって印象に残らないことが多いのですが、1冊にしてくれますと結構楽しめます。最近の2016年10月までの73回分がおさめられています。1回につき2つの俳句がおさめられていて、その時々の季節感あふれるものや、歴史的出来事などを話題にしてひと時のゆったりした気分を味わいさせてくれます。なんどか読み直したい本です。2017/01/10
kane_katu
5
★★★☆☆著者のことは知らなかったが、何かで本書の評を見て読んでみた。2010年から2016年の折々の世相を綴りながら俳句を紹介している。著者は1927年生まれ、今年の3月に亡くなった。本書の中では太平洋戦争や関東大震災、東日本大震災などの話が多かった。碌でもない老人も多いけど、総じて年配の人の話には耳を傾けるべきだと思っている。著者の声が聞こえてくるようなエッセイだった。2021/09/02
voyager2
2
少し前に読了し、何気なくご本人情報を検索したら、なんと3月3日にご逝去されていました。軽妙ながらも一本筋の通った庶民派がまた一人・・・ ご冥福をお祈りいたします。2021/03/08
futomi
2
小沢信男さん初読み。月刊誌『みすず』の表紙裏に2010年から16年までに連載されていたもの。2句にはさまれたエッセイ。体現止め、「ですます」と「だ」言い切りの混在など、学校で学んだ文書作法を裏切る軽やかな文章に、始めの内は戸惑った。書きとめておきたい言葉が多い。ぜひぜひ読まれることをお勧めします。 166ページ。俳句弾圧事件に直面し、治安維持法違反の嫌疑で在獄2年の不死男「終戦日妻子を入れむと風呂洗ふ」に胸が詰まった。2017/06/14
Olga
2
2010年4月から2016年10月までの月刊誌「みすず」の連載をまとめたもの。江戸時代から現代までのいろいろな句が引用されているので、勉強になるかと思って読んでみたが、東日本大震災以降は今の日本を動かしている人たちへの怒りが目立った。著者は昭和一桁生まれで、かつての日本と重なるところが多いのかもしれない。それにしても、(歳時記にはないらしいけれど)ゲバラ忌やチェーホフ忌が季語になっているとは。印象に残った句は「てんと虫一兵われのしなざりし 安住敦」2017/05/13