出版社内容情報
維新後、各地で生まれた民権結社。新しい社会を自らの手で築く理想は、なぜ挫折に終わったのか。
内容説明
維新後、各地で生まれた民権結社。それはさまざまな理想と幻想が渦巻く“デモクラシー”の拠点であった。新政権への割り込みを狙う人びと、政府に抗い新しい社会を築こうとする人びと。激変する時代への不安と期待が「自由民権」の名のもとに大きな歴史のうねりとなってゆく。激化事件による終焉までを描く。
目次
第1章 戊辰戦後デモクラシー
第2章 建白と結社
第3章 「私立国会」への道
第4章 与えられた舞台
第5章 暴力のゆくえ
終章 自由民権運動の終焉
著者等紹介
松沢裕作[マツザワユウサク]
1976年東京生まれ。1999年東京大学文学部卒業、2002年同大学院人文社会系研究科博士課程中途退学、東京大学史料編纂所助教、専修大学経済学部准教授を経て、慶應義塾大学経済学部准教授。専門は日本近代史、とくに近世・近代移行期の村落社会史研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
45
1874年、民撰議院設立の建白書の提出で、自由民権運動始まる(ⅰ頁)。建白:人びとが政府に意見を述べ政策提案をおこなうこと(39頁)。ということは、現代のNGOが政策提言(アドボカシー)しているのと同じか? 建白書の主張は、身分制社会解体後、統治の正統性は社会の構成員個人の政治参加で支える原理(41頁)。近世社会の解体から生まれ、戊辰戦争に規定され、近世社会の多様な考え方が存在した視点から捉えた(ⅲ頁~)。軍役:武士の主君に対する軍事力の提供義務(18頁)。2017/03/19
おさむ
41
どちらかというと明るく肯定的な捉え方が多い自由民権運動の負の側面を描いています。江戸時代の秩序が壊れる中、この運動を通じて地位の回復を図った士族もいたり、地位の向上を図る農民たちもいた。ポスト身分制社会を模索する運動だったんですね。戦争の後には必ずデモクラシーの動きが強まる。自由民権運動の場合は戊辰戦争後のデモクラシーだった。活躍した者たちが相応の地位を得られなかった恨みが運動の原動力という指摘はとても腑に落ちます。まさに運動とは異議申し立て。その後の大正、戦後のデモクラシーのさきがけと言えますね。2017/11/15
skunk_c
20
自由民権運動を戊辰戦争によって生み出された「ポスト身分社会」における、それまでの身分・社会体制から「はみだした」人たちによる、新しい社会体制造りと捉えている。したがって、板垣退助のような戊辰戦争の英雄(彼は最後までその立場で運動にかかわっていたとか)から、末は博徒まで、様々な人が様々な思いでかかわる。それは決してきれい事ではなく、詐欺まがいの組織拡大や強盗事件まで引き起こす。でもそうしたことを丹念に描くことで、この運動を立体的に捉えていると思う。それにしても板垣の振るまい、高い理想と節操のなさが際立つ。2016/07/04
Toska
18
『近代日本と軍部』でも序盤の重要な参考文献として再々その名が挙げられていた一冊。通説とはまた違った意味で、この運動の持つ重要性が理解できた。人々が身分や共同体に縛られ/守られていた近世→それらの条件が失われた近代への転換という社会状況が丹念に描かれているため、その前景として自由民権運動が鮮やかに浮かび上がってくる。時代が変わる、とはこういうことなのだ。丁寧な文献解題も良。2023/07/02
軍縮地球市民shinshin
16
自由民権運動研究が盛んになったのは1960・70年代。学生運動が一世を風靡した時代だ。日本にフランス革命のような市民革命は起こらなかったのか、という問いにその萌芽として自由民権運動を担ぎだしたのが、東京経済大学教授色川大吉である。彼は小田実と親しかったのではないかな。1884年に発生した旧自由党過激派の武力蜂起「秩父事件」は革命未遂の「壮挙」として喧伝された。しかし、研究が進むにつれて秩父事件は江戸期の百姓一揆と変わらない実態がどんどん指摘されて、その虚構が暴かれてしまった。本書は今日の虚構が削がれた自由2020/06/12
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