内容説明
明治から大正にかけ、一攫千金を夢みて遙か南の島々へ渡る日本人がいた。狙う獲物はアホウドリ。その羽毛が欧州諸国に高値で売れるのだ。密猟をかさね、鳥を絶滅の危機に追い込みながら、巨万の富を築く海千山千の男たち。南洋進出を目論む海軍や資本家らの思惑も絡んで「帝国」日本の拡大が始まる。知られざる日本近代史。
目次
プロローグ 絶海の無人島に、なぜ、日本人は進出したのか
第1章 アホウドリを追って―「海の時代」の到来
第2章 鳥類輸出大国「帝国」日本と無人島獲得競争
第3章 糞を求めるアメリカ人・鳥を求める日本人
第4章 アホウドリからリン鉱へ―肥料・マッチ・兵器の原料を求めて
著者等紹介
平岡昭利[ヒラオカアキトシ]
1949年広島県呉市に生まれる。1978年関西大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、下関市立大学経済学部教授。専攻は人文地理学・歴史地理学(文学博士)。著書『アホウドリと「帝国」日本の拡大―南洋の島々への進出から侵略へ』(明石書店、日本地理学会賞・人文地理学会賞・地理空間学会賞を受賞)、『離島研究1~4』(編著。海青社、3が地理空間学会賞を受賞)、『地図で読み解く日本の地域変貌』(編著、海青社、地理空間学会賞を受賞)、『地図でみる佐世保』(編著、芸文堂、親和銀行ふるさと振興基金を受賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
84
南の島々に何百万羽と生息していたアホウドリ。羽毛が高価で売れるというだけで、そのほとんどを絶滅寸前に至るまで、殺してしまった明治日本の密猟者たち。金もうけのためなら、自然保護とか動物の命への思いとかが、まるでなかったという事実は、読んでいて空恐ろしくなってしまった。戦後に天然記念物となり、必死の保護の結果、絶滅危惧とはいえ、数もやや持ち直しているのは、せめてもの鳥へのつぐないに思える。なぜ南洋の無人島へ日本が積極的に進出していったか、その理由がこれだったとは。「中ノ鳥島」という幻も、結局はその産物だった。2020/07/02
アナクマ
54
儲かる資源獲得のための仁義なき戦い(虚偽の企画書。存在しない島への借地願い。死のリスクを背負った早い者勝ちレース)。明治・大正の南洋領地拡大ばなし。これも歴史。◉鳥島で600万羽/15年間。南鳥島で15万羽/1年間。バードラッシュvsグアノラッシュ、中部太平洋への日米進出合戦。明治44年フランスへの輸出品目(生糸、銅、樟脳、帽子飾り用羽毛)うーん、原材料貿易。◉何故、遥か遠島に日本人が? の問いを抱き続けた地理学者の掘り起こしたアホウドリ物語。ブラタモリか世界ふしぎ発見で取り上げて。次は獣皮貿易に興味。2019/09/19
壱萬参仟縁
46
巻頭カラー頁でのコロニーをみると、アヒルみたいな印象のアホウドリ。小笠原諸島とアホウドリ(10頁~)。明治10年代移住者急増に伴い、アホウドリ捕獲され、羽毛は売られ、肉は食料に。卵は本土へ移出された(12頁)。津田梅子の父、仙は福澤諭吉、森有礼、西周らの明六社会員で、農業改良の実践家だった(15頁)。鳥島のアホウドリを研究。あほなのは人間の方で、羽毛を金づるにしてパリでウケた(65頁図表)らしいけどどうかと思う。動物愛護を。2015/11/23
さすらいの雑魚
43
夢と富を南洋の島々に追い小舟に身を預け大洋を押し渡り、無人島を占拠し独立国の紛い物をでっち上げ(無許可♪)帝国政府を引きずり回し、外交問題を起し後始末に祖国を右往左往させ1ミリも恥じぬ戦前日本人のバイタリティに圧倒される。この手の厨ニな活動は欧米系イケイケ国民の独壇場なはずが、御先祖様も超イケイケで😱思えば大日本帝国は列強だった訳で、むしろ誇大妄想スレスレの壮図を企てる特別に危険な連中のお仲間で当然だった😁温厚な令和日本と地続きな時代の人とは信じ難い、ほぼ異星人。野鳥好きなんでアホウドリ撲殺ダメ🙅♪2021/05/30
おかむら
37
明治の日本は鳥類の輸出大国だった。なかでもアホウドリの羽毛は超高値で売れるため、危険を顧みず南洋の無人島へ繰り出す人たちが。そこで行われていたのは大量のアホウドリの撲殺!500万羽以上。 ひぃぃ。いま、乱獲や密猟のニュースを見ると眉をひそめる私たち日本人ですが、明治時代はこんなことやってたよ…。アホウドリを追って島々に渡った結果が今の日本の排他的経済水域に寄与してる訳でもあり複雑な気分に。領土問題でおなじみ尖閣諸島や南沙諸島も出てきて経緯が学べます。尖閣所有してた個人は誰なの、とか。いやあ面白い本だった!2019/04/12