内容説明
国民の税金を食い荒らし、富を奪い取る者は誰だ。政治と経済に隠然たる力を及ぼし、法を逆手にとりながら、文明の対価であるべき税を掠めてゆく。揺らぐ財政の屋台骨。国を存立の危機に追い込む悪行を見過ごしてよいのか。その不正と複雑なからくりを解明し、日本の暗部に切り込む。好評『タックス・ヘイブン』の続編。
目次
第1章 タックス・イーターの起源
第2章 タックス・イーターが群がるもの
第3章 タックス・イーターとは何者か
第4章 終わりなき行政改革―タックス・イーターとの戦い 国内編
第5章 国境を越えて―タックス・イーターとの戦い 国際編
第6章 問題の所在と対策
著者等紹介
志賀櫻[シガサクラ]
1949年東京都生まれ。1970年司法試験合格、1971年東京大学法学部卒業、大蔵省入省。熊本国税局宮崎税務署長、在連合王国日本国大使館参事官、主税局国際租税課長兼OECD租税委員会日本国メンバー、主計局主計官をへて、1993年警察庁へ出向、岐阜県警察本部長、1998年金融監督庁国際担当参事官兼FSF日本国メンバー、特定金融情報管理官兼FATF日本国メンバー、2000年東京税関長、2002年財務省退官、2010‐12年政府税制調査会納税環境整備小委員会特別委員。現在、弁護士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hatayan
43
著者は元大蔵官僚の弁護士。高度成長の成功体験が忘れられず国の予算や税金を食い荒らす政官財のトライアングル、税金の支払いから巧妙に逃れる多国籍企業などを「タックス・イーター」と定義。 いわゆるバブルは円高に怯える大蔵省の金融政策に加えて通産省主導の6兆円の財政支出が引き金でした。GAFAは租税の回避に異様な関心を注いでおり、海外の有力なビジネススクールは節税法の講義から始めるところも。優秀な頭脳が非生産的な活動に使われる実態を嘆き、納税者である国民が日本の税制と財政に関心を持つことを求めます。2020/08/06
壱萬参仟縁
32
2020年までにプライマリー・バランスを均衡させることはできないことが明白(ⅴ頁)。元大蔵省の事情通の著者が指摘するのだから間違いない(現在は弁護士のようだ、奥付)。最高裁の判示によると、税金に関して何か不服があるなら会社か雇い主に言え。国に不服を言うことはまかりならぬ(6頁)。財政政策の難しさは、熱を帯びた経済を引き締めることが難しいこと(28頁)。TPPを経済問題としてのみ捉えることは危険(70頁)。これは正しい。2015/10/14
浅香山三郎
14
『タックス・ヘイブン』で主に国外の税負担回避の問題を扱かつた著者が、税を食いものにする主に国内の仕組みを語る。その形成過程を辿ることは、そのまま日本の戦後政治のあり方(自民党と財界・官僚の鉄のトライアングル)を仔細に見ることでもある。第5章は、前著とも関連する多国籍企業の話でタックス・ヘイブンを使つて、各国のインフラだけは利用するといふ悪質な「無国籍企業」としての姿が見える。第6章。会計検査院の機能不足の話。同院が政府の会計経理の適正を調査するだけなら、森友問題その他の不正などは分かりやうがない。2017/03/24
coolflat
14
日本の財政はほとんど破綻している。なぜこのような惨憺たる状態に至ったのかと言うと、タックス・イーターの存在にある。タックス・イーターとは国民の税金を食い荒らす者の事を言う。タックス・イーターには様々なタイプがあり、特定する事は容易ではない。しかしタックス・イーターの犠牲者の特定は簡単にできると言う。愚民政策によって税制に興味すら抱かない給与所得者だ。愚民政策とは源泉徴収制度や年末調整の事だが、税の仕組みや手続きの根本を国民の多数である給与所得者が知ろうとしないために、税金をいいように食い荒らされてしまう。2015/05/02
Haruka Fukuhara
11
租税関連の議論もなかなか面白い。この著者はきっとすごく頭の切れる方なんだろうな、と思いました。在学中に司法試験取って財務省に入ってその後弁護士に転身したとかそんな肩書だったような。さっきの感想は肩書を見てのものではなく文章を読んでの実感ですが。2017/07/12