内容説明
集団的自衛権の行使は、日本の安全性をほんとうに高めるのか―?現実を見ない机上の論理、現状分析のない提言、国際感覚の欠如が、「他国防衛」のための戦争へと日本を駆り立てている。安全保障と憲法論の第一人者が問いかける、日本の今。安全保障とは、憲法とは、集団的自衛権とは…。必読の一冊。
目次
第1部 「集団的自衛権」症候群(なぜいま「集団的自衛権」なのか;「歴史問題」と集団的自衛権;「ミサイル攻撃」論の虚実;中国の脅威と「尖閣問題」)
第2部 憲法改正と安全保障(憲法改正案の系譜;「国防軍」の行方;「国家安全保障」が意味するもの)
第3部 日本の果たすべき国際的役割(「積極的軍事主義」の行方;「国際社会のルール化」とは何か;いま、憲法を改正する意味;「安全保障」認識の転換を)
著者等紹介
豊下楢彦[トヨシタナラヒコ]
1945年生。京都大学法学部卒業。元関西学院大学法学部教授。専攻は国際政治論、外交史
古関彰一[コセキショウイチ]
1943年生。早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。獨協大学名誉教授。専攻は憲政史。1989年、吉野作造賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
27
安倍首相にとって集団的自衛権の問題は、必ずしも安保環境悪化の問題と直結しない(ⅹⅰ頁)。集団的自衛権行使は、軍隊として戦争することで、翼のない飛行機を飛ばそうとするような謂いになる(6頁~)。イラク戦争の総括がなされないまま、別の戦争に巻き込まれる懸念は払拭できない。自衛権行使が必要最小限度にこだわるのは、必要 最大限度(傍点)まで行使が 求められる必然があると指摘(31頁)。最小と最大では乖離も甚だしい。どんな状況を指すか、国民に説明しないとわからない。最小限度とは個別的自衛権の概念(35頁)。2014/09/28
ゆう。
19
「積極的平和主義」という名のもとに、日本を再び戦争のできる国づくりへとひた走る安倍政権。その最たるものは、集団的自衛権の閣議決定だといえます。憲法に反する問題を、国会に説明することなく解釈で変えていくことは、議会制民主主義が問われる事態です。本著では、なぜ今集団的自衛権なのか、歴史問題や中国など隣国との関係などから考えることができます。また、自民党の憲法改正草案と集団的自衛権の関係も読み解くことができます。多少難しい本だと思いましたが、為政者の安全保障に関する哲学の貧困が読み取れる本だと思います。2014/12/06
Francis
12
日米安保を研究してきた豊下さんと日本国憲法制定史を研究してきた古関さんの合作。安倍内閣が閣議決定で解釈変更した集団的自衛権の問題点について述べる。集団的自衛権の行使の想定がまったく現実離れしたものであることや、自衛隊を派遣するか否かで大問題になった湾岸戦争とイラク戦争の問題点とこの二つの戦争の検証がなされていないことを厳しく批判。国際紛争がかつての総力戦から低強度の戦争へ移行していることを踏まえて軍事力よりも警察権を活用するなど、今後の安全保障についても提言している。優れた本だと思う。2014/12/02
Mitoshi Ohtsuka
10
読むたびに、自民党のいい加減さに、怒髪天です。2015/07/27
勝浩1958
10
読んでいてだんだん不安になってきました。このまま今回の衆院選で自民党が圧勝して、安倍総理の思うが儘の政策が着々と進んでいくと、この日本はとんでもなく酷い国になってしまうのではないでしょうか。民主主義国家の終焉を迎えそうな、そんな気持ちになりました。悲観的すぎるのでしょうか、著者の豊下氏と古関氏が私の不安を煽っているのでしょうか。有権者のみなさんには、この本を読まれてから選挙に行っていただきたいと思いました。2014/12/11