岩波新書
琵琶法師―“異界”を語る人びと

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  • サイズ 新書判/ページ数 203p
  • 商品コード 9784004311843
  • NDC分類 768.3
  • Cコード C0273

出版社内容情報

この世とあの世の境で彼らは語った・・・。
皇家・将軍家の奏者として、あるいは最下層の宗教芸能者として、聖と俗、貴と賤、そしてこの世とあの世の<あいだ>に立つ盲目の語り手たちは、何を聴き、語ってきたか。「最後の琵琶法師」演唱の希少な記録を付す。
(琵琶演唱DVD付)

内容説明

モノ語りとは“異界”のざわめきに声を与え、伝えることである―皇族や将軍に仕える奏者として、あるいは民間の宗教芸能者として、聖と俗、貴と賎、あの世とこの世の“あいだ”に立つ盲目の語り手、琵琶法師。古代から近代まで、この列島の社会に存在した彼らの実像を浮彫にする。「最後の琵琶法師」による演唱の稀少な記録映像を付す。

目次

序章 二人の琵琶法師
第1章 琵琶法師はどこから来たか―平安期の記録から
第2章 平家物語のはじまり―怨霊と動乱の時代
第3章 語り手とはだれか―琵琶法師という存在
第4章 権力のなかの芸能民―鎌倉から室町期へ
第5章 消えゆく琵琶法師―近世以降のすがた

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ネギっ子gen

53
【あの世とこの世の媒介者である琵琶法師の声には、聴者を根底から襲い揺るがすような力があった】あしぶえさんに本書を教えられ――。皇族や将軍に仕える奏者、民間の宗教芸能者として、あの世とこの世の間に立つ盲目の語り手である、琵琶法師。この日本列島に存在した彼らの実像を浮彫りにした書。付録として、日本最後の琵琶法師・山鹿良之演唱の「俊徳丸」のDVD付。<異界からのざわめきのような琵琶の響きと語りの声が、ことばによって構築・編制されたこの世界に亀裂を入れ、人としてあることの根源的な哀感に私たちを向き合わせる>と。⇒2024/03/18

佐倉

11
琵琶法師たちを専ら平家物語を語る芸能者としてイメージしていたが、平家成立以前から琵琶を持つ盲僧は土地祓いや荒神祓いを職能とする民間宗教者だった。彼らが唱えた地神経には五郎王子譚など陰陽道と共通する要素もあるという。耕作や井戸掘り、建築など土地開発を行う際、大地は堅牢地神(地母)によって守護されているため祀らなければならない。そのための儀式を行う役割が琵琶法師にはあり、その延長として平家の怨霊を鎮める役割を期待されたという流れがあるよう。また朝鮮半島にも地神経を用いる読経や盲覡といった宗教者がいたという。2024/09/20

壱萬参仟縁

11
琵琶の弾き語りのみで生計を立てていた、山鹿良之(やましかよしゆき 1901-96)(14頁)。私生活でも不幸だったようである。義仲の破局へ突きすすむありようが描かれる(87頁~)。原文は音読してみた。確かに動態的である。琵琶法師とは、盲目という身体の刻印ゆえに流離・遍歴の境涯を余儀なくされた。原母子関係の欠損という心理的外傷を追っていた者(191頁)。2013/11/25

目玉おやじ

10
【資料本】私は「耳なし芳一の話」と云う怪談噺が好きなのだが、残念ながら、街を歩いていて琵琶法師の姿を見かける事は無いので、資料本として読んでみた。「耳なし芳一の話」がハーン夫妻の合作である事、琵琶法師の伝播・成立から隆盛・衰退に至る過程等、なかなかに興味深い。盲目の琵琶法師が敗れ去りし死者の声無き声を語る-。まさに教科書には書かれない闇の歴史である。歴史の重みの分だけ、怪談がより怖く感じる様になった気がする。付属DVD・最後の琵琶法師・山鹿善之氏の演奏の迫力は凄まじい。2010/05/29

うえ

5
「琵琶法師の聖性の根拠としてその異形性に注目したのは柳田国男である。柳田は、「鹿の耳」という論文のなかで、ハーンの耳なし芳一の話や民話の耳切れ団一に言及し、太古の聖なる司祭者の身体的刻印の問題を論じている。…日常の生活空間では罪=穢れの指標となる身体の欠損や異形性が、祭儀の空間では世俗的秩序を超えたヌミノースを顕現させる。…日常の秩序世界の向こう側にわだかまるアナーキーな力と交流することで、こちら側の世界はあらたな再生の力を獲得する。異形の司祭者の主宰する祭儀空間において…聖なるものを顕現させるのだ。」2024/04/21

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