内容説明
戦前の日本で、有史以来の「国家神」「皇祖神」として奉じられた女神「アマテラス」。しかしヤマト王権の時代に国家神とされたのは、実は今やほとんど知る人のない太陽神「タカミムスヒ」だった。この交代劇はなぜ起こったのか、また、古代天皇制に意味するものは何か。広く北方ユーラシアとの関係を視野に、古代史の謎に迫る。
目次
第1章 天孫降臨神話はいつ、どこから来たか
第2章 タカミムスヒの登場
第3章 アマテラスの生まれた世界―弥生に遡る土着の文化
第4章 ヤマト王権時代のアマテラス
第5章 国家神アマテラスの誕生―一元化される神話
著者等紹介
溝口睦子[ミゾグチムツコ]
1931年長崎県生まれ。1958年東京大学文学部国文学科卒業。1976年学習院大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2000年3月まで十文字学園女子大学教授を務める。専攻は日本古代史、古代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
413
アマテラスは日本神話の主宰神だと思っていたが、本書を読んでそれは天武帝によって形作られた皇統神話であること、またそれ以前はタカミムスヒこそが最高神であったことを知った。この分野に明るくないために、そうしたことの妥当性を判断することはできないが、少なくても本論考は論理を積み重ね、きわめてわかりやすく語られていることは確かである。記紀をはじめとした神話はもちろん、中国の歴史資料を駆使し、さらには当時の日本と朝鮮半島および北東アジアの政治的な状況を踏まえての考察である。私のアマテラス観を大きく変えた1冊。2021/10/21
ハタ
64
伊勢神宮のルーツを探す自分の読書旅第3弾は溝口睦子女子著「アマテラスの誕生」 天孫降臨神話が産まれた背景と幻の皇祖タカミムスヒの存在。そして国家神アマテラスの誕生の流れの3項が主題。伊勢神宮の祭神であるアマテラスが7世紀までは皇祖神ではなく、その前任にタカミムスヒという神が存在していた点が驚き。私達のイデオロギーと共に刻々と変化を遂げる信仰の形と神話。調べれば調べる程通説に出ている情報外の事が分かり、ふと遠いところに来てしまったなあという気持ちになる今日この頃です。こんなはずではなかったのですが、、。2016/04/27
南北
49
アマテラスはもともと天皇家の祖先神でなく、タカミムスヒこそが祖先神であったという仮説は興味深く感じました。しかし天孫降臨神話が北方遊牧民の説話を取り込んだというのは疑問を感じました。理由は説話を伝えたはずの遊牧民の文化が日本に入ってこなかっからです。たとえば種馬以外の雄馬の去勢が日本では明治時代まで行われておらず、義和団事件の頃でも去勢していない雄馬に騎乗している日本の軍人に対して欧米の軍人が驚いたという話が伝わっています。ほかにもありますが、いろいろと疑問点が残る本でした。2020/01/20
syota
38
日本の神話というと、戦前の国家神道や国粋主義と結びついた印象があって敬遠していたが、歴史学者が冷静に文献を分析するとこういう構造が見えてくるということがよく分かった。天武天皇の意向が強く反映された古事記をいったん脇へ置き、比較的客観的な日本書紀に目をやると、そこにはイザナキ・イザナミからアマテラス・スサノオを経てオオクニヌシに至る土着の神話(神代上巻)と、5世紀頃に北ユーラシアから朝鮮半島経由で伝わったと考えられるタカミムスヒを主神とする天孫降臨の建国神話(神代下巻)が、完全に区別されて記載されている。→2022/01/28
魚京童!
28
正しいかどうか、信じるかどうかは別として、考えてた。理解できるかとかそういう次元も置いておく。わからないところはわからないって逃げるところとか、言いたくないところは逃げるとか、知らないことを逃げるところはいいと思う。それでいいと思う。新書だからいいたいことを言えばいい。いい太鼓を鳴らせばいいと思う。私は好きだよ。自分の気に入る資料を基に好き勝手いう。私もそうしたい。事実とかどうでもいい。私の意見が通るかどうかを気にするって大事だと思う。2020/01/23