内容説明
その輝きで人々を魅了し続けてきた「金・銀・銅」は、贅沢な装飾品として、通貨として、歴史を動かす「富」そのものであった。そしてそのいずれについても、かつて日本は豊かな産出量を誇り、採鉱、精・製錬、金属加工の技術は、驚くべき高みに達していた。豊富な資料に基づいて、古代に始まる「モノづくり」の手わざの跡をたどる。
目次
第1章 日本は、「黄金の国」か、「銀の国」か、「銅の国」か―「金・銀・銅」をめぐる技術の系譜
第2章 祭、葬送、そして戦いの象徴―草創期の「金・銀・銅」
第3章 仏教伝来から、律令のもとで―定着期の「金・銀・銅」
第4章 国内への浸透、可能性の追求―模索期の「金・銀・銅」
第5章 「金・銀・銅」をめぐるダイナミズム―発展期の「金・銀・銅」
第6章 世界の最高水準の達成、そして―熟成期、爛熟期の「金・銀・銅」
第7章 近代化による新たな取り組み―再生期の「金・銀・銅」
おわりに―「金・銀・銅」を未来へ活かすために
著者等紹介
村上隆[ムラカミリュウ]
1953年京都生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了、東京藝術大学大学院美術研究科博士課程修了。学術博士。現在、独立行政法人国立文化財機構。奈良文化財研究所上席研究員、石見銀山資料館名誉館長。専攻、歴史材料科学、材料技術史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シルク
16
「金属は、もともと地球の構成元素である。火を用いて、地球から金属を抽出し、利用するようになった生物は、人類だけである。」(p.5) ふむ。金属の利用って、火の使用を前提としてる訳だよね。金属を抽出するには、火が要る。「しかし、やがて用を終え、廃棄された金属製品は腐食し、土の中で朽ちていくことになる。腐食とは、金属の鉱物化していく現象、つまり鉱物への回帰の旅であり、金属が人間の住む大気中から再び地殻の安定な状態に帰っていく過程として捉えることができる。」(p.12)この一文、感動的ですらあるように思う。2018/09/05
目黒乱
15
勉強になった。日本の歴史を勉強していると、金・銀・銅でつくられた工芸品や貨幣がいろいろ出てくるけど、そうしたものについて、基本的だけど意外な知識が身につく。緑青サビのことなんて基本だろうけど、知らなかったから面白かった。あと、小判の質を落としても、表面は金色に見せる「色揚げ」という技法とか。地味だけど、とても面白いです。2014/01/21
閑
8
表題どおり金銀銅の採掘・加工の日本史。はじめにの部分にも書かれてるが、文献資料はまったく使わず考古遺物を研究材料としているため、通史としてはかなり断片的な感じになっている。ただし個々の資料分析は相当細かく解説されている。特に加工技術での赤銅、四分一はカラー写真が口絵しかないのが残念なくらい銀や銅の配分が少し変わるだけで色合いが変わり、職人はそれを知り尽くしたうえで様々な加工品を作っていたというのがよく分かった。出来ればカラー写真もっと多くしたうえで、文献資料も取り入れた通史としての本を読みたいと思った。2014/09/25
とりもり
7
仏教伝来が、金・銀・銅を為政者だけのもの(古墳に埋葬される)から、庶民の目にも触れるようにした(仏像や寺院の装飾として)という指摘が印象に残った。それと、日本の伝統工芸レベルは、産業革命以前の最高レベルに達していたというお抱え外国人の指摘も印象強い。日本人の一つ事を突き詰める良い例だろう。小判の改鋳による劣化をごまかす「色揚げ」も面白い。遺跡の発掘品をあくまで科学的に分析するという理系的視野が新鮮。オススメの一冊。★★★★★2015/04/04
邑尾端子
6
古代から近現代までの、日本人と金属との関わりについて実際の出土遺物を紹介しながら読み解く本。筆者が元々は工学畑の人でバリバリ理系だからか、歴史畑の研究者の本にはない視点があって面白い。2016/10/14