内容説明
「お墓」とは何だろう。伝統的な祖先への敬愛の表現か。家制度の因襲か。各地のお盆、葬儀、埋葬、墓参りなどの、死者にまつわる儀礼や祭祀を丹念に観察していくなかで、石塔の「○○家之墓」もまた別の相貌を見せてくる。嬰児の死の扱い方や、戦死者の処遇をも視野に入れながら、民俗学から見た死者祭祀のありようを探る。
目次
第1章 お盆の儀礼から何が見えるか(「迎え火」「送り火」の一般的常識;盆棚は先祖を祀るのか)
第2章 葬送儀礼と墓(葬送儀礼における霊魂;埋葬と石塔建立のあいだ)
第3章 「お墓」の誕生(画一化していく墓;共同幻想としての「お墓」)
第4章 夭折者の墓と「お墓」(子供の墓;戦死者と「お墓」)
著者等紹介
岩田重則[イワタシゲノリ]
1961年静岡県生まれ。東京学芸大学助教授。専攻は民俗学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ステビア
21
一般にお墓と聞いてイメージする石塔は、近世に寺檀制度が完成してから普及したものである。この本では墓制を遺体/遺骨、埋葬/非埋葬、石塔建立/非建立の三次元で分類することを提案している。2020/11/21
木ハムしっぽ
9
25年のフィールドワークを素に、お墓と死者祭祀の成り立ちを解説する本書。山梨、静岡、千葉の農村漁村を中心に実地調査してきたからこその具体性が凄い。遠い記憶に霞む、長崎の離島に住んでいた私の祖母の土葬とも通じる点があり、地域差、宗教差を超えた普遍性があるようだ。文書調査中心の柳田國男とその学派への反発が本書を短期間に書き上げたエネルギーとなった感も伝わってきて面白い。2021/07/01
あかつき号
6
お墓の変遷。8年前の著書であるから、昨今のお墓離れを民俗学的にどう見るのだろうか、著者のコメントを聞きたい。 総じて緩めの文章で読みやすいが、終盤に取り上げた戦死者の墓についてのくだりが興味深かった。先の大戦の戦死者のデータを取り上げながら、靖国神社との関連も言及し、そこに反戦を読み取るのは、ある意味、読者の特権といえるのでは。2014/12/05
Papa-だって
4
カロウト式角柱型石塔を用いる先祖代々の墓が、古く(古代・中世)から続いている伝統ではなく、現代社会の現象であったとは、うすうす感じていたが驚いた。これが「分断」の始まりなのだろう。2017/01/17
コーキ
3
①先入観の排除と、適切な研究基準の設定。(柳田国男、和辻哲郎批判)②遺体埋葬地点…死霊の封鎖、石塔…葬式仏教的先祖祭祀(両者の併存と質的分離)③共同幻想としてのお墓④戦死者の重層的祭祀と記念としての役割(家、地域社会、国家)2016/02/01
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