出版社内容情報
黒船来航からの150年間、日本は何を求め、いかなる道を歩んできたのか。通史を描いた執筆者9名が、各時代の日本を理解する上で欠かせない問いを掲げ、それに答えながら、総まとめをおこなう。シリーズへの入り口としても最適。
内容説明
近代の幕開けから一五〇年余、日本は何を求め、どのような歩みを進めてきたのだろうか。そしてこれからどこへ行こうとしているのか。通史を描いた執筆者九名が、各時代の日本を理解するうえで欠かせない根本的な問いを掲げ、それに答えながら、総まとめをするシリーズ最終巻。各章ごとに推薦書を紹介。日本近現代史への導入としても最適。
目次
第1章 幕末期、欧米に対し日本の自立はどのように守られたか
第2章 なぜ明治の国家は天皇を必要としたか
第3章 日清・日露戦争は日本の何を変えたのか
第4章 大正デモクラシーとはどんなデモクラシーだったのか
第5章 一九三〇年代の戦争は何をめぐる闘争だったのか
第6章 なぜ開戦を回避できなかったのか
第7章 占領改革は日本を変えたのか
第8章 なぜ日本は高度成長ができたのか
第9章 歴史はどこへ行くのか
終章 なぜ近現代日本の通史を学ぶのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みねたか@
28
岩波新書「日本近現代史」全10巻のとりまとめ作品。各巻の著者が,その時代を捉えるポイント,アプローチの考え方などを解説するぜいたくな企画。艦砲外交で開国を迫る相手に対峙した幕臣はしたたかだった。明治天皇は西欧化の擁護・推進役と権力維持の調整弁という役割も担った。日露戦争が日本を帝国主義の軍事的色彩の強い社会に変ぼうさせた等,自分の歴史認識が断片的で薄弱なことに気づかされるとともに,知的好奇心が刺激されることしきり。通史でありながら執筆者の個性が存分に発揮されているのも素敵だ。2019/09/09
よこしま
18
岩波さんのシリーズ近現代史の総括本を、逆に入口として読んでみました。著書を起点に、更に掘り下げてみたいと。全巻はムリでしょうが、一通り読み終えて再読したら、かなり歴史の見方が変わるかなと思います。感銘を受けたのは、吉田裕氏の戦争責任問題についての言及ですね。70年以上経っても追及が棚上げされた指摘は、米国が冷戦へ移行し、日本の民主化や戦争責任の追及に対する熱意が冷め、日本の経済復興や親米保守政権の育成にシフトしたためと。読売新聞でも日本人自らが検証し、政治・軍指導者の責任を今こそ明かしていく必要があると。2020/01/23
おさむ
18
シリーズ日本近現代史(9冊)のサマリー本。徳川幕府は開国交渉において強かな一面もあったこと、日清日露戦争がマスメディア、学歴、都市化の始まりになったこと、東京裁判での戦争指導者責任観をアメリカが国際規範のなかで作っていった話等が興味深い。2014/10/09
coolflat
17
1章。不平等条約の評価。日米通商友好条約は不平等条約であるため、日本側に一方的に不利だと言われてきた。しかし必ずしもそうとは言い切れないと評価する。例えば領事裁判権。日本側が外国人に対して裁判を行う権利を放棄した点は、主権国家の立場から見れば不平等条約といえる。だが江戸日本は主権国家ではなかった。主権国家とは中央集権化し、法律を領域内全てに及ぼす国家の事であり、日本では大名がそれぞれの藩領の中で、自身の裁判権を行使していた。つまり日本に集権された裁判制度ができるまで、領事裁判権問題の解消はできなかった訳だ2016/07/19
壱萬弐仟縁
11
井上勝生名誉教授によると、「主権国家とは、中央集権化し、法律を領域内すべてに及ぼす国家」(17頁)。日本の場合、アメリカに頭が上がらないので、霞が関や永田町ではなく、アメリカ中央なのか、という感じがする。TPPでは領域内で完結しない。法廷はアメリカ国内。主権国家がTPPと対峙する問題は大きな問題。各章末に著者おススメの5冊が掲げられる文献案内は嬉しい。戦争責任、そして、戦後責任。戦争を知らない世代が世界史必修に加え日本史もという流れになってきている。安藤昌益、二宮尊徳、田中正造らの協同主義(172頁~)。2014/01/24