内容説明
なぜ、わが子を自ら危険に陥れてしまうのか。深刻化する背景は、単に親を責めるだけでは捉えきれない。そこには、日本の貧困な福祉行政、親を取り巻く社会の急速な変容など、根本的な問題が潜んでいる。児童相談所に勤務し数々の相談に対応してきた著者が、その実態や解決の手がかりを、自らの体験をもとに語る。
目次
序章 児童虐待への取り組みがはじまる
第1章 児童虐待とは何か
第2章 虐待はなぜ起きるのか
第3章 虐待への対応をめぐって
第4章 虐待する親と向き合う
第5章 児童相談所はいま
第6章 児童虐待を防止するために
著者等紹介
川崎二三彦[カワサキフミヒコ]
1951年岡山県生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。大学卒業後、児童相談所に勤務。心理判定員(児童心理司)を経て児童福祉司となる。厚生労働省「今後の児童家庭の相談体制のあり方に関する研究会」委員なども務める。現在、全国児童相談研究会(児相研)事務局長、日本子ども虐待防止学会会員、京都府宇治児童相談所相談判定課長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あすなろ
85
躾と虐待の違い。これは僕も時々頭を過ぎるテーマ。そんなこともあり、読友さん読書情報より情報を得て読了。で、何が違うのか?読了してみて、人権を尊重するか侵害するものか?ということのよう。しかし、これでは漠としている。つまり、明確な定義はないそうである。虐待が起こる起因としては、様々なストレスやその親か受けた過去の仕打ち、即ち被害者自体が被害者である等。煎じつめて考えると、根底の愛情かと思うのだが、虐待の事実を読むと決してそこに愛情がない訳ではないよう。で、人権侵害の有無に辿り着くのではあるが…。2019/01/27
佐島楓
67
児童心理に対する専門的な知識を持った職員が少ない、また着任しても短期間で異動がある、など児童相談書のシステマティックな弱点が見えてくる。悲惨な事件が起こるたびに「児相は何をやっていたんだ」と憤りを覚えるが、内部の職員にも同情すべき実態があることも知っておくべき。2018/11/16
シン
11
勉強になった。2007/09/24
おらひらお
6
2006年初版。児童相談所に勤めた著者による児童虐待の本なのでかなり臨場感があります。ただ、どの分野でもそうですが、法の整備が社会の実態に追いついていないことがわかりました。これからも児童相談所の役割の比重が高まることが想定されるので、社会的なコストを支払う覚悟が国民に求められていると思われます。あと、貧困の問題も児童虐待に関係するそうです・・・。2012/05/02
貧家ピー
5
副題の通り、児童相談所での勤務経験ある著者の本。 虐待の定義・体罰の社会的認識から法律まで、広い範囲に渡っての問題指摘。 ストーカー法案と警察介入の違いをみると、虐待事件には腰が引けているという印象すら受ける。2006/09/22