出版社内容情報
誰にも読めない「幽霊文字」、特定の職業で使われる文字、個人が造った漢字……。中国から取り入れた漢字を日本語として使いこなすための試行錯誤の中から生れてきた、驚くほど多様な文字の世界を紹介する。意味、用法から字画に至るまで柔軟に変容をとげた「日本の漢字」の歴史から、日本語表記の豊かさを支えてきたものが見えてくる。
内容説明
誰にも読めない「幽霊文字」、特定の職業で使われる文字、個人が造った漢字…。中国から取り入れた漢字を日本語として使いこなすための試行錯誤の中から生まれてきた、驚くほど多様な文字の世界を紹介する。意味、用法から字画に至るまで柔軟に変容をとげた「日本の漢字」の歴史から、日本語表記の豊かさを支えてきたものが見えてくる。
目次
第1章 漢字を受け入れる―日本の多様な文字体系
第2章 「圓」から「円」へ―俗字・国字の誕生
第3章 よく見る漢字
第4章 文字から見える社会
第5章 地名と漢字
第6章 一人だけの文字
第7章 日本人のための漢字とは
著者等紹介
笹原宏之[ササハラヒロユキ]
1965年東京生まれ。1993年早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得。博士(文学)。専攻は日本語学(文字・表記)。早稲田大学社会科学総合学術院助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
45
日本の漢字に話を限定しているとはいえ、地方差、中国、韓国・朝鮮からの影響も決して無視できないことを、現実の例が示している。著者が使用例を調査するのにかかった時間と手間を考えれば、まさに汗と努力の結晶が、本書に収録された漢字。資料が残っていた字は幸運な方で、資料も残さず消えてしまった字もおそらくは多数あるはず。漢字の世界の奥行きの広さが存分にわかる一冊。2017/10/22
ホークス
40
2006年刊。日本での漢字の有り様を幅広く語る。密度が濃く読み応えあり。造字とか異体字は、中国でも他の国でも発生する。組織、身分、役割ごとに生まれる様は、ニッチと種分化を思わせる。例えば図書館=「国がまえの中にカタカナのト」等。小地域だけの地名字もあり、現地を探検して調べるエピソードが面白い。誕生の自由さは、廃れる字の多さでもあるだろう。辞書も絶対的な基準は示せない。著者は「死んだ正しい文字」より「生きた俗字略字」の方が文字として価値があると言う。生き物らしい揺らぎをポジティブに捉えていて気持ちいい。2024/05/19
さとうしん
16
日本独自の漢字・異体字・読みなど歴代の漢字の諸相、幽霊文字、地名などの形で特定の地域で使われている漢字、自衛隊、学生運動、メディアなど特定の文脈での漢字の略記、映画の字幕の事情、作家が生み出した漢字等々、日本の漢字使用の状況総ざらい的な内容となっている。中国や韓国など漢字文化圏に属する外国との比較がなされているのもよい。2024/12/17
ダンスにホン!ころりん
10
20060120第1刷発行 160412読了 めくるめく漢字ミステリー、謎を解き明かしていくようなとても読みごたえのある本でした。2016/04/12
isao_key
10
読み終えて著者である笹原先生の漢字への強い愛、想いを感じた。白川静先生亡き今、後継者は先生しかいないかもしれない。日本語の表記には、漢字、平仮名、片仮名、ローマ字、ギリシャ文字、アラビア数字、ローマ数字、果ては梵字までが混在している。世界において類を見ない言語だという。日本人がこれらの混在した文を読んでも混乱が起こらないのは「字脈」から、その文字がいかなる文字体系に属するかを瞬時に判断しているからである。また漢字は表意性が高く、構成要素が多く、組み合わせの多様性から文字の解釈に俗解を生みやすいともいう。2013/01/19