出版社内容情報
紀元前8世紀のギリシアからローマ時代まで,実に千二百年近くの命脈を保った古代オリンピック.その競技の詳細,会期中の休戦,優勝者の得る利益についてなど,興味深い話題を最新の考古学・歴史学の成果を踏まえて語る.
内容説明
裸の走者が駆け、戦車が競技場を揺るがす。熱狂する観客、勝利者の頭上の聖なるオリーヴの冠―紀元前八世紀のギリシアから古代ローマ時代に至るまで、実に千二百年近くの命脈を保った古代オリンピック競技会を、最新の考古学・歴史学の成果を踏まえて語る。競技の詳細、会期中の休戦、優勝者の得る利益についてなど、興味深い話題は尽きない。
目次
第1章 オリンピックの誕生(古代オリンピックの舞台を掘る;オリンピア・遺跡案内 ほか)
第2章 祭典と競技(休戦を運ぶ使節たち―祭典の幕開け;競技者・審判・観客―オリンピアに集う人びと)
第3章 勝利と栄光(走る、闘う;戦車競走―古代オリンピックの華 ほか)
第4章 変わりゆくオリンピック(ヘレニズム世界とオリンピア;残照のオリンピア―ローマ時代)
著者等紹介
桜井万里子[サクライマリコ]
1943年東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了、博士(文学)。現在、東京大学大学院教授。専攻、古代ギリシア史
橋場弦[ハシバユズル]
1961年札幌生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了、博士(文学)。現在、大阪外国語大学助教授。専攻、古代ギリシア史
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感想・レビュー
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Toska
15
2004年出版すなわちアテネ五輪の企画物だが、それで10人の書き手を調達できるのは流石に古代ギリシア史、研究者の層が厚い。これが古代ロシア史では難しかろう(羨ましい…)。一般向けを意識したのか、文章は平易で読みやすい。一方、面白おかしく書き飛ばすのではなく、分からないことは分からないと認める誠実さ。ギリシア人が全裸で競技していたのは有名だが、あの慣習がいつ始まりどのような意味を持ったのかも不明であるらしい。2024/08/31
ホンドテン
1
図書館で、村川(1963)ベロテット(2004)に続く。研究者(若手?)による手堅いアンソロ。アゴン社会やキュドスなど古代を語るための鍵概念も紹介され更に新知見。今度は戦車競走設備の驚異のカラクリ(発馬機どころか上下するブロンズ鷹像まで)解説あり。村川との相違としてはローマ期大会への評価、必ずしも堕落、衰退とはしない。むしろ帝国の盛衰と運命を共にし(インフラ面で)末期でさえ体裁はなしていた可能性を青銅版(1994年出土)記録から紹介。ローマ以上にマケドニア諸王の執心(フィリッペイオンが代表)は印象深い。2021/05/19
鵜殿篤
1
とてもおもしろく読んだ。古代オリンピックの歴史を通じて、ギリシアとローマの古典文化や当時の生活の具体的な有り様のみならず、ヨーロッパ近代が抱える認知の歪みまでも見透すような、一点突破全面展開のお手本のような歴史記述だと思った。18世紀から19世紀にかけてローマ文化を貶めてギリシア文化を礼賛する傾向にあったのが、最近の研究の成果によって是正されつつあるという報告は、他の領域でも共通して見られる現象で、なかなか興味深い証言だ。2018/12/12
rista99
1
古代ギリシア・ローマ時代に行われていたオリンピックの姿を解き明かした本。4年に一度、1200年の永きにわたり続けられたこの祭典が、非常に盛大に開催され、休戦協定を設けるほどに文化的政治的に重要なものだったことには驚くばかり。歴史好きな人に特にお勧めの、古代地中海世界に関する好著。岩明均の歴史マンガ「ヒストリエ」を読んでいると当時の世界観が分かりやすい。レスリングの「グレコローマンスタイル」が、足技禁止という古代のルールを適用した「ギリシャ・ローマ方式」という意味だというのも読書と同時期に知って納得した。2016/08/16
チャーリイ
1
大学の授業の参考図書。 ほんと競争好きなんだな古代ギリシア人は。 世界史の知識が無いので、当時の「国際的」というのがヘレニズム世界のことなんだということから認識を新たにした。何度か読む。2015/05/14