出版社内容情報
「神の国」発言,新しい歴史教科書の登場といった状況の背後には何があるのか.そこには国民学校世代が中心になっているという共通点が浮かび上がる.国民学校で「刷り込まれた」教育が一連の状況に反映していることを検証する.
内容説明
「国旗国歌法」の制定、「日本は天皇を中心とした神の国」発言、「新しい歴史教科書」の登場といった一連の国粋主義的な動向の背後には何があるのか。そこには国民学校で教育を受けた世代が中心になっているという共通点が浮かび上がってくる。国民学校で「刷り込まれた」教育が現在の時代錯誤的な状況に反映していることを検証する。
目次
はじめに―今なぜ戦時中の教科書か
第1章 国民学校の時代
第2章 教科書に日の丸があがるとき
第3章 生命を捧げる光栄
第4章 日本が「神の国」であった理由
第5章 君が代と「天壌無窮の皇運」
第6章 母こそは命の泉
第7章 広がるアジア、消えた西欧
第8章 大日本青少年団と隣組
おわりに―アジアへの視点
著者等紹介
入江曜子[イリエヨウコ]
1935年東京に生まれる。慶応義塾大学文学部卒業。現在、作家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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おかむら
33
軍国主義教育徹底のためにそれまでの小学校から国民学校と名前を変えたのが昭和16年4月1日。そこで終戦まで使われた歴史以外の教科書(国語、修身、音楽など)を検証。日の丸君が代への過剰なまでの賛美、天皇は神、軍人になってお国のために死ぬのが誉みたいな内容を低学年から繰り返し繰り返し刷り込もうとしてるのが恐ろしいほど。はー、洗脳ってこういう風にやるのかー。そりゃ戦後は墨で塗るところだらけになるわ。そして台湾と韓国にもまったく同じ教科書を使って学ばせていたってのも驚くよ!2016/08/13
みさと
6
皇国臣民錬成を目的に小学校から改められた国民学校で使用された国定教科書を読む。日本とは神に等しき天皇陛下の治めたまう神国であり、皇国臣民たるの務めは天皇陛下のために命を投げ出すことである。なぜそうなのか具体的・論理的に説明などしない、その理論でないものを低学年のうちから繰り返し刷り込んでいくのが皇民教育の重要な課題である。教科書で、授業で、行事で、儀式で、繰り返し繰り返し刷り込んでいく。個人としての自由や意思は否定され、徹底的に従順な臣民をつくりあげていく。今日なお日本人はその呪縛から自由でないのでは?2021/08/02
★★★★★
6
戦時中の教科書を読むことで、国民学校の洗脳的な教育の実体を明らかにしようとする本。戦時期に小学生時代を送った著者の言葉には耳を澄ますべきものがあります。しかしこの本もまた、右左に関わらず戦時中の日本を語る人びとの大部分が感情的であることの例からは漏れていないように感じます。分析に主観的な価値判断をすべり込ませることは、結局その批判するところの教科書と同じ間違いを犯すことだと思うんですよね。歴史を語るのは難しいなぁ。2011/01/23
Akiro OUED
3
国民学校は、国民の育成が目的ではなく、臣民製造マシンなのだ、という当時の教育関係者の発言が痛い。ここまで、自発的に狂えるという事例だね。核保有国に直面する「神の国」日本。核武装を肯定する世論が、核先制攻撃論からプーチンの唱える防御的侵攻論に誘導されかねない、と本書は警告する。2022/04/25
おらひらお
3
2001年初版。国民学校の教科書の中身がかなり偏っていることを紹介。そこから先の展開が必要な気がした読後感でした。2020/08/21
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