出版社内容情報
芸術創造の歴史のうえで芸術の保護者たるパトロンの果した役割に光をあてるユニークな美術史。
内容説明
芸術創造の長い歴史のうえで芸術の保護者たるパトロンの果たした役割は大きい。富と権力を誇るルネッサンスの王侯貴族や教会、新興の近代市民階級、コレクターや画商、現代の政府・企業。彼らは芸術のあり方にどんな影響を与えたのか?美術館や展覧会が登場した意味とは?社会的・経済的担い手とのかかわりに光をあてるユニークな美術史。
目次
序章 パトロンとは何か
1 パトロンの登場
2 栄光のパトロン
3 パトロンの拡大
4 新しいパトロン
終章 パトロンの役割
著者等紹介
高階秀爾[タカシナシュウジ]
1932(昭和7)年、東京に生まれる。53年、東京大学教養学部卒業、同大学大学院で美術史を専攻。54‐59年、パリ大学附属美術研究所で近代美術史を専攻。国立西洋美術館主任研究官、文部技官などを経て、79年、東京大学教授。92年、国立西洋美術館館長(‐2000年)。現在、大原美術館館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キムチ
38
15C以前 芸術家の存在はなかった。メジィチ家が歴史上パトロンとし現れて、その後フィレンツェの経済人が工房を構える職人に仕事を発注し、ダビンチ・ミケランジェロ・ラファエロと花開いていく。パトロンは教皇から君主と形を変え、宮廷人芸術家の誕生となる。ヴァンダイクの様に絵画の中に忠誠と自負を表裏に描いたことは時代の要請だろうね。17Cの絵画市場が市民社会の富分散の為、多様な趣向に広がって行き特化された絵画商が出てきて 安価な評価でのもと「囚人の強制労働」と言う絵画制作の結果が今日、我々が今日 目にする逸物なのね2017/03/31
Nat
35
図書館本。面白かった。芸術家とパトロンの歴史。作品には財力や宗教、権力などが深く関わっていたが、それが現代になるにつれ様々に多様化している。パブリック・アートや公共の美術館の場合は、私たち市民もパトロンの1人になる。そこで、専門家の学芸員の存在の重要性を感じた。2021/05/15
なる
17
なかなかきな臭いタイトルである。アートとお金、という特に現代にはつきまといがちな話題について、その歴史という観点から紹介している。貴族に囲われながら絵を描く生活をしていた中世における宮廷画家の絵は基本的に貴族に限定されていたが、次第にその財力が貴族から有力な商人など民間へと移行して行くにつれて作品が大衆へ、やがて作家自身が自ら発信して販売されるシステム、つまり画商が生まれて行くという経緯。現代ではその画商が画廊・ギャラリーという形態で浸透して行く、という経緯。さすがは美術の第一人者。博学に驚かされる。2024/09/13
swshght
13
とにかく名著。「パトロン」というのは、芸術を擁護/支援/保護する人たちのこと。長らく芸術一般や絵画の研究は「作品」の分析に主眼を置いてきた。つまり「創作論」が市民権を得ていた。しかしながら、ここでは、その作品を受容する人間の存在が欠落している。そこで、ここ数十年の間に「受容論」や「社会史」の視点で芸術を研究する動きが広まった。これは映画研究とも連動している。近年では、映画館や観客を含めた文化史としての映画論がさかんに論じられている。芸術は作品のみならず、現象/文化/社会としての側面をも考慮する必要がある。2012/09/29
nizimasu
7
中世以降の美術家にとってパトロンの存在は欠かせない。ルネサンスには教皇や国王が、それから市民社会に繋がっていくダイナミズムは、パトロンの有無が芸術家の存在そのものを定義するような表裏一体の関係とも言える。そして新興の成金や美術商という現代にも繋がる新しいパトロンについても誕生からその役割についてものべている。ここで面白いのが結局、市民社会がススムにつれて、その美術家の主題が変化していくのはパトロンの立場の変化もあることだからだ。その変化のプロセスを見事なてさばきで解説していて読みやすい本でした2014/03/11