出版社内容情報
アパルトヘイト制度を撤廃し,新体制への船出をした南アフリカ共和国.複雑な人種関係と地域の多様性,都市化を軸にした近代化を綿密に検討し,「違いを尊重した統合」に向けた壮大な実験の今後を,背景ゆたかに描く.
内容説明
一九九四年に全人種参加の総選挙を行って、新体制への船出をした南アフリカ共和国。アパルトヘイト制度を撤廃し、「違いを尊重した統合」に向けた壮大な実験が始まっている。複雑な人種関係と地域の多様性、都市化を軸にした近代化に着目して、近・現代史を綿密に検討し、直面する「負の遺産」や、国際社会のなかでの位置を描ききる。
目次
序 史上初の総選挙
1 アパルトヘイトの崩壊
2 植民地支配と人種主義の起源
3 都市化の百年
4 同時代の南アフリカ社会
5 新生南アフリカの挑戦
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュンジュン
11
96年刊。「ネルソンマンデラ」(岩波新書)に、「これを超える入門書は未だ出ていない」と紹介されていた本書。その評にふさわしい内容だった。先住民(コイサイ人やズールー人)、侵略者(英国系とオランダ系)、移入奴隷(インド人他)が織り成すモザイク国家。ダイヤと金の発見は「近代化」を促進し、南アフリカ地域随一の経済力を有する。複雑な歴史過程を、近代化による"都市化"をキーワードに快刀乱麻、スパッと解説。2021/08/31
ふぁきべ
7
20年以上前の本だが読んでみれば再販された理由がよくわかる。参考文献がないのは残念だが、アパルトヘイト撤廃までの南アフリカの歴史をアカデミックにも一般的にもなりすぎずうまく説明している。白人のオランダ系のアフリカーナーと英国系移民、インド系、カラード、そして原住のブラックアフリカンで構成されていることは知っていたが、その背景や経緯を上手く理解できたように思う。本書が出版されたころに思い描いていたような国にはなっていないように思うが、→2019/09/13
arata
1
あとがきの通り、「黒人と白人の対立」という文脈だけで語られる事が多かったが、この二項対立的状況が支配的になっていった歴史的根拠が丁寧に明瞭に描かれていている良書。特に関心あったのは以下。 ワインはフランスから宗教弾圧を受けオランダに亡命したユグノーによって持ち込まれた。 カラードの起源は白人男性が自分の使役するコイコイ人や奴隷の女性に間にもうけた人たち。 ナタールのインド人は英国の土地隔離政策で労働力が不足した埋合せ。 イギリスへの対抗心がアフリカーンスのアイデンティティ、アパルトヘイトを生んだ2020/01/25
tiki
1
知れば知るほど、驚くほど複雑・ユニークな歴史を抱え、どんな未来が待ち受けてるのか誰も分からない魅力的な国であることが分かる。2019/04/13
ひるお
1
課題図書。南アフリカにおける複雑な人種構成やその分布が、どのような歴史のもとに今日の状況に至ったのか、都市と農村の関係、政党・労働組合などの運動、国際関係、そして、アパルトヘイトという国家的人種差別政策から脱却し、様々な意味において「多様」な「虹の国」を目指す南アフリカの達成と課題に至るまで、 この一冊を読めば南アフリカについてだいたいのことが把握できる。人種差別政策の一因となった、外国人に対するアフリカーナーの不満が、現代日本に蔓延する外国人に対する忌避意識と重なるように思えて不気味だった。2017/12/06