出版社内容情報
多元的産業社会が迫っている.円高に揺さぶられ,低迷をつづける日本経済.そのなかでベンチャー,中小企業,市民事業が新たな質の活動を始めている.環境負荷ゼロ,エネルギー自給,途上国との共生などの夢あふれる目標実現のために活動する人々.たちはだかる行政の壁.現場取材にもとづき,新経済システムへの胎動を生き生きと描く.
内容説明
多元的産業社会が迫っている。円高に揺さぶられ、低迷をつづける日本経済。そのなかでベンチャー、中小企業、市民事業が新たな質の活動を始めている。環境負荷ゼロ、エネルギー自給、途上国との共生などの夢あふれる目標実現のために活動する人々。たちはだかる行政の壁。現場取材にもとづき、新経済システムへの胎動を生き生きと描く。
目次
1 「使命共同体」のパラダイム(協同の思想;資本・経営・労働を一体化する ほか)
2 「辺境と周縁」の条理(丹後ちりめんの危機;過疎に挑む「童話村」 ほか)
3 「実験的社会システム」の旗(再生可能エネルギーへの転換;市民共同発電方式へ ほか)
4 「政策と合意」のはざま(行政の壁に風穴をあける;公共事業シェア変動せず ほか)
5 「多元的経済社会」への道標(社会的有用労働の活用へ;NPOが地域を活性化する ほか)
著者等紹介
内橋克人[ウチハシカツト]
1932年神戸市に生まれる。1957年神戸商科大学卒業。現在、経済評論家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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山口透析鉄
10
内橋克人氏の著作集、岩波書店から刊行されたと全8巻も買って読みましたが、前段ではこの岩波新書を読んでいたので躊躇せずに購入したというのはありますね。 生活者としての経済学の視点が一貫していた氏らしく、新自由主義的な経済観とは無縁な、おそらく人類が目指すべき共生経済システムの一端がここに示されていたのでは?とも思うのですが、やはりこの分野は完成しませんね。そこはしょうがないのでしょうが、目指すべき道筋を見せてくれた1冊ではあるので……日経新聞らしからぬ連載でもあり、とても好きな本で、これもオススメです。2003/06/07
壱萬弐仟縁
9
少し古いのだが、「使命共同体」の概念は今でも色褪せない(第1章)。この概念は、協同、中小企業、国際協力という分野で問われて生成されたようだ。当該地域を維持する使命はどこにあるのか。当時は阪神淡路震災からの教訓だと思うが、3・11での使命とは何か。原発放射能漏れを防ぎ、雇用を創り、産業再生。こうしたものに障害となりそうなのが、消費増税やTPPだと思う。しかも、第3章の再生可能エネルギーのところは、今読んでもそれほど本質は違わないことに気づかされる。原発事故が起きていたのに福一事故を出してしまった悔いが残る。2013/07/05
まさげ
5
企業一元社会から多元的経済社会。「小田急線高架化事業」が今どうなっているか気になる。「ゼロ・エミッション」が心に残った。2015/08/31
Shinya Fukuda
3
資本主義でも社会主義でもない第三の道を提唱する協同組合運動、地方の伝統産業の衰退から再生、再生可能エネルギーへの転換、中央集権的な官僚主導の地方活性化計画の問題点、廃棄物ゼロ社会への挑戦について書かれている。地方のことは官僚主導のお仕着せではなく住民の声を聞いて地元の主導で行うべきだ。一元化ではなく多元化でなくてはならない。リゾート法は官僚主導のよくない政策の典型として複数回言及されている。NPOを積極的に活用することの利点がアメリカとの対比で説明される。20年以上昔に問題になったことが解決されていない。2022/09/05
ksg
3
発行から長い年月が過ぎた今、なお色あせない。本書に示唆されているような新たなる経済とは、いつやってくるのか。現在の日本はどう見ても、バブル時代から継続している制度や意識の矛盾に溢れている。企業一元主義の社会はなおも続いている。若者たちは当時以上に未来を見据えることができていないのではないか。この“ツマラナイ”社会において、NPOやNGO、市民事業などの活躍に関する記述は少なからず勇気づけられる内容であった。この日本で何ができるか、考えてみたいと思う。2012/07/01