出版社内容情報
二○世紀の幕あけとともに美術表現は新たな時代を迎えた.前世紀末の印象派の出現にはじまり,ヨーロッパの前衛表現からアメリカの抽象表現へ.オリジナリティを目指して画家たちの格闘が展開する――.現代の美術は人間社会にとってどのような価値をもつのか.二○世紀絵画表現の意味を画家としての眼で問い直し,現代美術の可能性を探る.
内容説明
20世紀の幕あけとともに美術は新たな時代を迎えた。前世紀末の印象派の出現にはじまり、ヨーロッパの前衛表現からアメリカの抽象表現へ―。オリジナルな表現を目指して美術家たちの格闘が展開する。それらの作品は人間にとってどのような価値をもつのか。20世紀絵画表現の意味を画家としての眼で問い直し、現代美術の可能性を探る。
目次
1 マチスを回顧する
2 20世紀前半―ヨーロッパ前衛芸術(マルセル・デュシャンの還元的情熱;抽象表現への諸段階;シュール・レアリズム)
3 20世紀後半―アメリカの抽象表現(進化というイデオロギー;サブライムとバーネット・ニューマン;不在の芸術;ジャスパー・ジョーンズのオーバー・レイ;ポロック評価の逆転)
4 よみがえるホリゾント
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
邪馬台国
4
アメリカのポロック以後の抽象表現主義の行き詰まりを以降の作家として鋭く批判しています。ポロックの系譜が大きく(崇拝的に)力強くの果てに突き詰めてどんずまった一方で、デュシャン、マティス、ピカソ、ミロの系譜が持つ未消化な要素をあえて残す事こそ次の世代へのバトンタッチにつながるというのは希望に満ちた考察でした。出版から二十年以上経った今読んでも、刺さるものを感じました。とても感銘を受けたものの少し難しく、読み落としていたり誤読している部分も多いと思うので、再読したいと思います。2016/12/17
Auristela
3
客観的に批評してるかと思えば突然に感情的であったり、ただ言えるのは作家や作品にここで書かれているようなレッテルを貼ったなら大抵の場合には価値が貶められるように感じた。けど、作家として主観することは大事だし、やはり語るべきではないのではないか。河原温のエピソードにある執拗なまでの徹底ぶりは共感できるな。2017/01/25
Francis
3
20年ぶりに再読。20世紀美術をマティスから回顧。前半はヨーロッパ美術、後半はアメリカ美術。アメリカ美術についてはアクション・ペインティングのポロックを中心に考察している。西欧近代の行き詰まりとともに現代美術も行き詰まっているのではないか、と問題提起、著者なりの答えを探そうとしている。2014/07/22
とす
2
ポロックの話などが印象的だった。難しい説明もあるが、どうにか理解しながら読み進められる。2020/10/05
Ucchy
2
美術館で観る色や線が画面を埋め尽くしているような絵が何で作品とされているのか疑問に思って読んだ。本書によれば、20世紀以降「還元的情熱」に突き動かされてシュールレアリズム等々様式の転変を続けて行きついてのが抽象表現主義だが、行き詰りのような状態に陥っているということだった。マチス、デュシャン、ポロック、ニューマンなどが出てくる。一方で23年前の本であり状況は変わってきているのかも、と思う。草間彌生や村上隆の名前は出てこない。著者自身の現代美術家としての模索の体験を語っているところも面白かった。2017/09/03