出版社内容情報
ハイデガーは二○世紀最大の哲学者として,またきわめて難解な思想家として名高い.一方ナチスへの協力者として,その言動は厳しく糾弾されてきた.ここでは主著『存在と時間』の精緻な解読を通じて,ハイデガーの存在論や哲学史観の全貌を描く.と同時にその作業を通じて,なぜナチスに加担したのか,その理由をさぐり,思想の核心に迫る.
内容説明
主著『存在と時間』の精緻な解読を通じて、ハイデガーの存在論や哲学史観の全貌を描く。と同時にその作業を通じて、なぜナチスに加担したのか、その理由をさぐり、思想の核心に迫る。
目次
序章 一つの肖像
第1章 思想の形成
第2章 『存在と時間』
第3章 存在への問い
第4章 ハイデガーの哲学史観
第5章 『存在と時間』の挫折
第6章 形而上学の克服
第7章 ハイデガーとナチズム
第8章 後期の思索―言語論と芸術論
終章 描き残したこと
ハイデガー略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まさむ♪ね
43
やはり二十世紀最大の哲学者、まったく甘くない。それでもなんとか読了できたのは、それだけ良書ということなんだろうな、この本が。ほどよく抑制の利いた木田先生の文章が耳に心地良い。おかげでアリストテレスやニーチェ、カントにも興味がわいてきた。いままで考えもしなかった新しい世界をみせてくれるハイデガーの思想は、ダイナミックでなんだかワクワクしてくる。わからないなりに。詩や絵画など、芸術の世界に思索が展開いくのも新鮮だった。哲学は知のアートなのかもしれない。『存在と時間』読みます。2015/06/14
ころこ
34
若者の戯言である実存哲学と呼ばれる『存在と時間』の上巻からではなく、存在の一般を問おうとしてついに書かれなかった下巻について考察しています。思えば『カラマーゾフの兄弟』や『資本論』など未完の名著は意外に多く、それらは不思議なことに書かれなかったものに思想が宿り、人がそれに動かされているような気がします。昔は著者の本も何となく読んでいたような気がするんですけど…2020/09/27
SOHSA
33
《購入本》『現象学』に続き木田先生の著作読了。『現象学』とは大きく異なりかなり解りやすい。思想・哲学関係の本でこれほど抵抗なくスムーズに読める本は久し振りだ。木田流のハイデガー論は、かなりの部分ですんなりと腑に落ちて今まで不可解に感じていたところが解消された。ここを足掛かりにしていよいよ本格的に『存在と時間』に突入していきたい。本書はおそらくこれから『存在と時間』に躓いた時に何度も戻ってくる大切な拠り所になるだろう。2015/12/30
抹茶モナカ
32
ハイデガーについて知りたくて、手にした。主著『存在と時間』が未完である事は知っていたが、ハイデガーが西洋哲学全体についてを視野に入れ、思索した学者だと初めて知った。哲学的センスが欲しくて、哲学者についての新書を読む事が多いが、その哲学者の本を実際に読んだ事がなくて、何事につけ、そんな猫パンチ的な取り組みしかしない自分が切ない。2017/01/09
koji
26
「100分de名著」の戸谷先生の講義で目を見開かされた「存在と時間」。唯分かり易さ故に物足りない所もありました。それは2点。①存在にとって時間とは何か、②「存在と時間」のどこが西欧哲学に衝撃を与えたか、が不明である事。それを本書で補いました。要約すると、①人間が人間になるとは、そこに現在・過去・未来という時間の場が開かれていなければならないこと、②自然を生きて生成するものと見る事によって、行き詰まった欧州の人間中心主義的文化の解体を企てた事になります。まだ咀嚼しきれていませんが、この点は胸に留めておきます2022/04/29