内容説明
とどろく砲音…で名高い軍神広瀬中佐。死んでもラッパを放さなかった木口小平。爆弾三勇士。軍国の母の鑑とうたわれた「一太郎やあい」の老母…。戦前国定教科書の花形だった軍国美談、その教材としての改廃の裏には、驚くべき事実が隠されていた。軍事教材の歴史をたどりつつ、民衆と戦争、軍部と教育のかかわりについて説き明す。
目次
1 軍事教材の誕生
2 軍国美談と民衆―軍事教材改廃の歴史(「強い教材」の精神的支柱;美談の改作;戦争の近代化と新しいヒロイズム)
3 軍事教材の転生(変身する軍事教材;「排日」教材の出現)
4 軍事教材の戦後(政府・占領軍次元の処理;民間における処理)
各期国定軍事教材一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あんさん
5
タイトルにある「軍国美談」だけでなく、プロレタリア運動側や抗日側の話も書かれていた。世界的に植民地主義だった時代背景はあるだろうし、教科書はこんな事ばかり書いていたのではないだろうが、国のためとか民族のためとかからは精神的に自由でいたいと思った。2020/08/12
あにこ
0
当時の教材や、教材の改廃・採用の内実を知り得たという収穫はあったものの、全体を通して何ともツマラナイ本であった。確か50円ぐらいで買った筈なので金銭的な惜しさは特にないが、50円程度の代物にこれだけの苦痛を強いられたのかと思うとかえって腹立たしい。2015/03/21
丰
0
Y-202008/08/29
オオタコウイチロウ
0
名著。「民衆史」 である。①⑴民衆の生活実感による厭反戦の「流言蜚語」は、⑵アジアの対日本「流言蜚語」へとも達し得る「プロレタリア」文化教育と切れてあった。逆に⑴とは、生活に媒介される形で戦前よりあった。②敗戦後、文部省であれ占領軍であれ、教科書の「皇軍」要素は無視をもって処理され、戦争を語らない限りでの「平和教育」「民主主義」がここに確立した。③⑴よって、①⑴は、②の再編かつアジアの「流言蜚語」と結びつく途を絶たれ、⑵条件つき「平和教育」に吸いあげられる他なく、むしろその温床となるルートへと誘導された。2024/02/16
お魚くわえたザサエさん
0
今では考えられないような軍国主義の教育について詳細に記述されている。 戦争を疑うということを考えられなかったのだなと実感する。2018/04/08