出版社内容情報
『文明論之概略』は,福沢諭吉の気力と思索力がもっとも充実した時期に書かれた最高傑作の一つであり,時代をこえて今日なお,その思想的衝撃力を失わない.敢えて「福沢惚れ」を自認する著者が,現代の状況を見きわめつつ,あらためてこの書のメッセージを丹念に読みとり,今に語りつぐ.読書会での講義をもとにした書下し.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんがく
15
福沢諭吉の名著を、丸山真男が講義したもの。現代語訳版とともに読む。上巻では古典を学ぶ意義について、福沢諭吉についてを語った後、1~3章を扱う。福沢の思想の背景にあるギゾーやトクヴィルについての解説、国体論批判について丸山自身の戦時体験との比較などが豊富で、理解が深まる。議論する際の注意点(テーマの優先順位の確認など)について書いた第1章は是非現代人にも読んでほしい。第2章の国体、政統、血統を比較して、天皇制と国体を切り離した話はかなり面白い。2020/03/29
しゃん
10
はるか昔、自分が浪人生時代に当時通っていた駿台京都校の夏の推薦図書だった一冊。これをようやく手に取ることができた。岩波文庫の『文明論之概略』を読みながら本書を読むと、福澤先生の意図するところが非常に明快に入ってくる。分かりやすいけど、深い解説。中巻に続く。2017/01/20
かす
8
福澤諭吉著『文明論之概略』の副読本上巻。この古典における内容の解説や時代背景が掲載されており読む助けになる。特筆すべきは古典との向き合い方に示唆を与えてくれる序章だ。古典とどのように向き合っていくために何を理解すべきかを教えてくれる。序章の冒頭に述べられているが読書、ましてや古典に対する向き合い方を習熟する時間は現代にはない。この本を足がかりに古典・難書に立ち向かうことができそうだ。2020/04/12
あかつや
8
20年ほど積んでいてようやく読んだが、いやあ積んでた甲斐があった、すごく面白い本だ。元々名著である『文明論之概略』がさらに輝くようじゃないか。上巻は『概略』の序~第三章までを一歩一歩着実に解きほぐしていく。現代と同じ語でニュアンスの違う言葉なんかも丁寧に説明されるので、ああそういう意味だったのかと膝を打つ箇所が多々あった。また、まえがきで推奨されていたように、本書で「朗読」と指示されている所ではなるべく声に出して読んだが、言われている通り福沢の文はリズムがすごくいい。全部はさすがに面倒だけど音読でいこう。2019/04/01
アブーカマル
6
圧巻の一語に尽きる。丸山真男もすごいが福沢諭吉が凄すぎる。国体論批判はほとんど福沢諭吉がやってしまっていることに衝撃と悔しさを覚えた。(福沢がほとんど完璧に終えてしまった国体論がなぜ再び蘇ってしまったのかが我々に残された課題だが…) 福沢による国体の定義は日本人が日本の領土において支配していること、それは先の敗戦で一度は断絶したことになるので現在の日本人にとっては甚だ都合の悪い定義だが、皇統連綿は福沢にとっては関係ない。皇統は独立の「兆候」であってその原因ではない。2017/10/07