出版社内容情報
子どもはおとなになるまでに,ことばを二度獲得する.最初は誕生から始まる幼年期,そして第二のことばの獲得は,子どもの学校生活と共に始まる.学童期のことばはどのような特徴をもち,子どもの発達とどうかかわり合うのか.学校という場での子どもとことばのかかわりに焦点をあて,新しいことばの世界と格闘する子どもの姿を明らかにする.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Takao
3
1985年1月21日発行(初版)。著者の本は『幼児期』『子どもとことば』に続き3冊目。1歳半頃子どもたちが身近な大人との関わりの中で獲得することば(一次的ことば)と学童期に与えられる「二次的ことば」を対比し、その重層的な構造を論じている。難しく感じる部分も多かったが、小学校入学前の時期に親密な大人との関わりとたくさんの経験の中で形成される「一次的ことば」の大切さを学んだ。乳幼児期の早期教育が招く悪影響にも納得。自身のこととしては、「方言」を矯正してしまい、バイリンガルになれなかったことが惜しまれる。2023/01/30
くまくま
3
ことばの発達ではなく、ことばと発達である点がポイントか。幼児期に現実経験から獲得される一次的ことばから、学校生活の中で使用される二次的ことばに至る繋がりは、子どもにとって負担の大きいことであり、その困難さに目を向けて行かなければいけない。半世紀近く前の本になるため、近年の発達心理学の知見がどうなっているのか学びたい。2022/08/04
凛朱
1
★★★★☆だいぶ前に参考文献リストで見かけた気がする。言葉の獲得の性質を二つに分け、親しい人との会話により育まれる「一次的ことば」の上に、第三者への意思伝達のため勉強して学ぶ「二次的ことば」が発展していくとしている。幼い時にたくさん会話をすることがとても重要だと理解できる。読み聞かせはこの二段階を繋ぐ重要な役割を果たしているのでは。 1980年代当時で二次的ことばへの偏重が心配されているけれど、スマホが手放せない世代の私たちはどういう風に見えるんだろう。2020/12/15
ちーえみ
1
幼児期の現実経験によりそって使用される言葉を一次的ことば、学校教育の影響による現実の生活場面とは切り離された場で獲得する言葉を二次的ことばとし、この2つの概念を用い子どもの発達と言語の獲得について様々な視点から考察している。前者が後に後者へ変化するという社会の一般的な理解は浅はかであり、二次的ことば獲得期には一次的ことばと相互に関連し合い補い合う、これこそが学校教育を始めとする言語教育において根本的に理解されるべきだという。学問的な内容だがとても読みやすく、筆者の柔軟な思考が心地よさと興味を与えてくれる。2017/01/14
misui
1
子どものことばを二つの段階に分けて展望し、その重層的な発達が必要であるとします。ひとつは親しい人とのコミュニケーションの中で育まれる文脈に依存したことば。もうひとつは現前する文脈から独立した(受け手を想定して設計された)ことば。後者は学校教育以降で得られるものですね。この二つを経てことばを獲得していくのですが、近年は生活に根ざしたことばは空洞化し、その上に機械的にことばが導入されるためにアンバランスな状態にあると言えます。子どもだけではなく自分のことばの状況と照らし合わせると大変得るところが多かったです。2010/03/23