出版社内容情報
ボタ山のふもとの納屋生活のあけくれ,また,一秒後の生命の保証もない坑内労働の合いま合いま,折にふれて老坑夫たちの語ってくれた,懐かしい笑い話.“幼い頃から筑豊炭田のあらあらしい脈動をききながら育ち,敗戦後はいくつかのヤマで働き,生涯を炭鉱労働者とともに生きたいと願ってきた”著者が生き生きと描き出す労働者像.
内容説明
ボタ山のふもとの納屋生活のあけくれ、また、一秒後の生命の保証もない坑内労働のあいまあいま、折にふれて老坑夫たちの語ってくれた、懐かしい笑い話。“幼い頃から筑豊炭田のあらあらしい脈動をききながら育ち、敗戦後はいくつかのヤマで働き、生涯を炭鉱労働者とともに生きたいと願ってきた”著者が生き生きと描き出す労働者像。
目次
1 笑い話と身の上話
2 死霊の話―働く幽霊
3 八木山越えの話―ヤマの嫁盗み
4 特別キリハの話―女坑夫の哄笑
5 スカブラの話―黒い顔の寝太郎
6 ケツワリの話―脱走と流亡
7 離れ島のケツワリの話
著者等紹介
上野英信[ウエノヒデノブ]
1923‐87年(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アナクマ
44
炭鉱労働者の聞き書き。苛烈な境遇に歯軋りしたり、またそこにヒトの生の不屈と妙味を発見したり。当事者にとって忘れ難き出来事が「これは笑い話ばってん…」と語り出されるのは何故か。◉労使の仕組みや時代背景(明治〜昭和30年代)に不明点あれども、貴重な肉声と掘り下げ。◉「愛の真実の深さを具体的に立証できる唯一のもの、それは労働の共有だけであった」という一文は、広く人間同士のつながり方についても考えさせられるものでした。◉生活物資の調達←その労働の担い手←奴隷的な存在、という古今東西絶えない視点はもっと学びたい。→2021/12/20
びっぐすとん
16
図書館本。凄い話だ。明治から戦後復興期までの日本を支えてきたのはこういう地底の労働者なのだ。炭鉱夫になったらもうお天道様の下では働けない。ケツワレしてもまたどこかのヤマで働く他はない。「いろはを習うよりスラを曳け」炭鉱夫の子供にはそもそも他の選択肢がない。危険で劣悪な環境で朝地下に入って夕方出てこれる保証もない。命懸けのキリハでは笑い話が恐怖や衝動をギリギリ食い止める。地下で狂う女が美しい。その日を生きるだけで精一杯なのに老いるまで生き延びた炭鉱夫は明るい。死と隣り合わせだからこそ生の実感があるのだろう。2020/01/05
michel
15
★4.0。『追われゆく坑夫たち』とぜひセットで読んでほしい。老坑夫たちが、ふと語ってくれた「笑い話」。生活と労働のもっとも重い真実をそう名付けた、彼らの魂を上野英信さんの魂を揺り動かし、美しい感傷文となって、私たちの魂を揺り動かしてくれる。2020/02/09
riviere(りびえーる)
8
「世界記憶遺産」として炭鉱記録画家山本作兵衛氏の作品が認定されたことが先日新聞に載りました。それを見て、あの本の挿し絵の人だっ!とすぐわかり、9年ぶりに再読。劣悪な環境の中でもたくましく生きる炭鉱夫たちの記録。この絵には凄みがあります。記憶遺産に文句なく認定される価値ありです。2011/05/29
p31xxx
7
地の底の笑い話は、苛烈な地底で適者が生存したと同じく、彼らの口伝てに生き延びたに過ぎず、炭鉱が廃れて構造が抜き取られるとともに語られなくなったのだなと感じた。ほとんどが生死を懸けた武勇伝に言い換えられそうな話だ。貧困、脱走、拷問……章が進むにつれより地下深いところへ潜るように炭鉱の社会の暗部に近づいてゆく。ただ、著者の書きぶりは人情がどこにもあるということを言っている。人間、どこまで行っても笑い飛ばすことができるのだという迫力がある。2021/01/16
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