出版社内容情報
ここには詩というかたちで,日本の民衆が自己を発見し社会を見出した記録がある.書き手は,療養者,海上労働者,銀行員,農民,教師,学生,主婦とひろく,主題は,広島からベトナム戦争まで多彩で,民衆が体験した戦後史である.それは,言葉の技術によってではなく,心の葛藤の深さによって読む人を感動させる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
45
「クラシックス」として復刊されたアンソロジー。初版は1966年。有名な詩人の作は少なく、編者のいうように、現代詩史には登場しない詩人・作品がほとんどを占める。驚いていいのは、半世紀前に実に多くの人々が詩を作り、さまざまな媒体によって世の中に出していたこと。教科書で読むだけの「文学」とは違った営みがそこにはあって、喜怒哀楽をみごとに表現したり、鋭く社会の不合理などを告発したりしている。時の流れのために、わかりづらくなっている作品もあるだろうが、今の時代になっても書かれた意義や詩心を感じ取れる作品が多い。2023/07/30
sk
9
ほんものの詩がある。2021/10/26
よきし
8
戦後日本の民草によって書かれた詩を、詩人真壁さんの寸評を添えて読んでいくという一冊。たまに、動けなくなるような詩と出会う一冊でもあった。人々がこのようなかたちで言葉と向き合い、それを魂の中から紡ぎ出していた時代は豊かであったと思う。今の私たちの言葉の軽薄さ。語ることさえできなくなった私たちは、まず言葉を取り戻すことから始めなければならないのだと改めて強く思った。詩のすごみを改めて感じさせられた一冊だった。2022/06/10
なかすぎこう
2
この本が発刊された当時の、労働者、農民、学生、病を得た人々たちが著した詩を集める。頭で考えた詩ではなく、自らの生活、労働に根差した詩であり、実感に満ちている。これは比喩かな、と思うと実物を指している。仕事をしながら、情熱とエネルギーを持って詩を著した人々がいた、ということ。今の日本からは遠くなってしまったが、このような力のある詩(民衆の詩というのかな)は、いつでも残しておきたいと思う。2024/05/11
JIVAN
2
戦後からベトナム戦争辺りに書かれたアマチュア詩人の作品集。 思いの外、意識が高いというか政治色が強い。時代もあるかもだけど、詩を書く趣味はやはり高尚なのかな。 素朴なのもあって、『便所掃除』の詩は強烈。おすすめしたい。 '66年の新書で、最近復刊されたそう。図書館に初版本があったので借りてみた。 昔の新書ってカバー無かったんだ。ペーパーバックじゃん。 活版印刷で作品ごとに違う行間で詩を並べていくのは大変だったろうなぁ…2021/11/14
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