出版社内容情報
私たちの文化生活のなかで最も重要な地位を占めている文学,これを狭い文壇意識から解放して,正しく社会に結びつけることほど大切な問題はないであろう.なぜ文学は人生に必要か.すぐれた文学とはどういうものか.何をどう読めばいいか.清新な文学理論と鋭い社会的洞察力をもって,文学のあるべき姿と味わい方を平明に説く.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カブトムシ
38
本の中で、トルストイの「アンナ・カレーニナ」の読書会をしています。そして、この小説の愛読者として、ドストエフスキーと志賀直哉が挙げられています。前者は、ヨーロッパの近代小説の中で、第一の作品と位置付けています。また、後者は、近代文学の中で、教科書のような名作と述べています。世界文学の巨人と日本文学の「小説の神様」の推奨するこの「アンナ・カレーニナ」を読んで置かねばと読んだ次第です。志賀直哉は、確かに本の名前を挙げて褒めています。ドストエフスキーよりトルストイが好きと書いています。世界文学の名作と言えます。
ころこ
30
「人生に文学は必要か」という、1950年に出版された本書の問いを、現在の我々が受け止めたとき、違和感を覚えるのは「必要」という言葉でしょう。ラノベは言うまでも無く、春の訪れや夏の終わりにも文学はある。我々を駆動させるものが意図せずどうしても表出してしまうことが文学だとあえて定義すれば、我々は、より広く文学を発見するはずです。戦後復興の最中であれば、むしろテクストに限定されない文学が求められていたはずです。ところが、本書では「必要」という言葉の使い方がおかしいため、本書における文学は、テクストに限定している2018/03/28
壱萬参仟縁
25
文学が面白いからこそ、進んで読む(7頁)。 活字離れの大学生に文学を。 美はきわめてあいまいな言葉(13頁)。 よき行動とよき人生を生み出すためには、 人生にインタレストをもち、感動しうる心と、 新しい経験を作り出す構想力とが必要(24頁)。 よい本とは、正しいところはひどく正しい、 という本(28頁)。 1%でも見いだせればそれでよしか。 生きるとは、外界と交渉することによって、 諸インタレストの体系に変化を与えつつも、 つねに調整してゆくこと。 2014/03/28
あっきー
24
⭐3 アンナ・カレーニナが取り上げられていると知りどんな読み方があるのかと思った、文学は読む人を変える新しさが必要で大衆小説は人気優先のため欠けているので近代文学の名作を読むことで変化することの楽しさや感動する力をつけようとする、斬新さ奇抜さを追究している芥川賞なども現代的な実験作に当たるかもしれない 2021/09/01
Narr
22
1950年初版。文学者の在り方や文学の効能を説いた本。現実の行動を変える潜在力をもつ文学の素敵さ。読書とは外部化された経験の内部化なのかも。2021/11/28