出版社内容情報
本書は,天保十三年(一八四二年)十月に起こった近江国甲賀・野洲・栗太の三郡四万の農民による大一揆の顛末記.天保の改革のさなか,幕府の企てた理不尽な検地に抗して,あえて生産と生活をかけて闘った農民たち,そしてついに検地を挫折させ「十万日延期」の目的を達した大闘争の記録は,封建権力と民衆の知られざる姿を描き出す.
内容説明
本書は、天保十三年十月に起こった近江国甲賀・野洲・栗太の三郡四万の農民による大一揆の顛末記。天保の改革のさなか、幕府の企てた理不尽な検地に抗して、あえて生産と生活をかけて闘った農民たち、そしてついに検地を挫折させ「十万日延期」の目的を達した大闘争の記録は、封建権力と民衆の知られざる姿を描き出す。
目次
1 ことのあらすじ
2 中世武士の隠栖
3 領主・地頭百三十家
4 天保十二年の冬
5 京都西町奉行の口達
6 幕府派遣の見分使
7 徒党は衆愚の妄動か
8 四万農民の蹶起
9 強訴徒党
10 その後に来たるもの
11 江戸北町番所の大白洲
12 一揆徒党と村の共同体
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Makoto Yamamoto
12
課題図書の「燃ゆる甲賀」の背景理解のために手に取った。 60年前に発行された資料を活用しているため、一部に今では分かっている事象もあったが、それなりにシッカリした資料となった。 但し、文が飛ぶため少々読みづらいのは残念。 なぜ、三上藩、水口藩が一揆を抑えようとしなかったのも理解できた。 彦根藩、膳所藩も既に情報をにぎっているはずだったのに、手出ししなかったのは水野忠邦の失政⇒失脚を待っていたのかも知れない。2022/03/20
おおにし
11
天保の義民は今から150年以上前に滋賀県南部で発生した農民闘争。農民一揆と異なる点は焼き討ちや暴動行為ではなく、幕府の不条理な検地に対しての集団抗議行動であったことだ。今私が住んでいるあたりがその舞台であったことは知っていたが本書でその詳細を知って、まさにその闘争の中心地にあったことを再確認した。農民蜂起の合図となった神社からの鐘の音はおそらくここから聞こえたに違いない。そんなライブ感覚で最後まで興味深く読めた。闘争は検地の無期延期で終結したが、首謀者として拷問死した農民たちの犠牲による勝利であった。2013/05/29
広瀬研究会
6
京阪での活動資金に充てるため、近江には多くの大名・旗本の飛び地が乱立していたらしい。雄藩には及び腰の幕府役人は、立場の弱い小藩や旗本領の百姓だけに無理難題を押し付け、結果として4万の農民の蜂起を招いた。主君のための忠臣は義士と呼ばれるが、庶民のために一身一家を捧げた犠牲者は、これを讃えて義民という。そんな雄渾な筆致で書かれた天保の近江大一揆の顛末記。2020/11/15
ユウヤ
3
高校の恩師の御先祖が関係しておられ、また土川平兵衛の像が小学校にあったことから気になっていた一揆。自由民権運動家が掘り起こした一揆であるがゆえに権力側と民衆側の相克と捉える向きもあろうが、あくまでも幕府の理不尽な「見分」に対して村の共同態勢が起した反発である。幕府権力が強大な時代ならば蹶起に至らなかったかもしれないが、動揺しつつある権力の締め付けに人々はおいそれとは従わなくなっていた。「封建体制の崩壊にこの一揆が如何に影響を及ぼしたか」というよりも、事象の全体像を掘り下げることで見えてくる何かに惹かれた。2018/10/18
びーちゃん
0
評価22010/11/30