出版社内容情報
京都の発展のあとを地域的にたどり,千年の古都というその歳月を,都の中に求める試みが本書である.太秦の地に歴史の胎動を探り,街の規矩に平安朝の繁栄をしのぶ.古えを彷彿させる祇園祭.歴代王朝に因縁深い嵯峨・宇治・大原.京都を愛し,長くこの地に住む歴史家が,遺跡をめぐり時代を再現する.これこそ真の京都案内書といえよう.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
61
京都揺籃の地、加茂。平安京以前の太秦。王朝の香り漂う嵯峨、宇治。京都の歴史とその中心となった地を結び付けて紹介することで、京都案内と京の歴史と地誌、全てを結び付けて読む事が出来る稀有な本。京都旅行の際、自身の興味ある時代をゆっくり散策したい時、計画時や散策時に手元に置きたい本だとも思う。半世紀前に書かれたものなのだが、それでも京都案内、京都通史として古びていないのは、京都というものがある意味普遍性を持っているからであるような気がした。時分は次は、普段京都史では触れられない寛永の面影を追ってみようかな。2018/11/06
そうたそ
22
★★★☆☆ 京都を網羅的に解説している一書。京都本といわれるようなものは数多くあると思うが、コンパクトながらもここまで徹底的に京都というものを書き尽くしているものはなかなかないように思う。五十年以上前の本であるために、内容の古さ、文章の古さは仕方ないが、本書は決して色あせてはいないと思った。とにかく内容が濃すぎて把握しきれていない部分も多々ある。いずれまた再読したいという思いを込めて星三つ。2020/02/21
クラムボン
16
林屋辰三郎のこと、司馬遼太郎との対談集「歴史の夜咄」で少しだけ知ってます。生まれは他所だが長年京都の大学に籍を置き、京都市史の編纂も務めた日本史学の方。京都の歴史を地理に着目して16のトピックスで辿る。中でも「湖底の風土」の章は、 太古に湖であった地が大内裏の禁苑・大池泉となるが、今は神泉苑と御池(通)に名前を残すだけとなる。そして江戸前期の町衆・角倉父子が面白い。父の了以は私財を注ぎ大堰川や高瀬川を開削、事業と土木の人だ。一方子の素庵は家業を継ぎつつも、本阿弥光悦らと嵯峨本を出す、文の人でもある。2022/02/18
岡本匠
11
自分が生まれる前の本。京都の場所と古代から近代までの歴史を重ねあわせたもの。一旦灰燼に帰した京都。それでも再生し、現在の古都となったということ。古いけれど決して古くない良い本。2017/01/21
はち
9
岩波新書青版。約50年前の一冊。まさに川端康成の「古都」の世界である。一冊で京都の歴史を見渡すことが可能であるし、文体も平易で読みやすい。何より半世紀前の京都の写真が素晴らしい。京都行きたくなってきた。2011/07/08