出版社内容情報
今日われわれが見る日本国土の景観は,自然自体の変化のほかに,父祖が何千年の昔から意識的・無意識的に自然に加工し働きかけてきた長い闘いの結果を含んでいる.著者は山・川・田畑の景観を実地に観察調査しながら,自然に加えられた人間の労働や,使われた道具を類推し,景観変化の意味を考え,さらに,この仮説を文献史学や考古学によって補完して,景観形成史を探り,各時代の国土開発の特質をも明らかにしようとする.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hiroshi0083
4
弥生時代以後の稲作について、①行われた土地の形態、②水の確保、③水害への対応、④支配者の関与などを歴史的、地理的知識を駆使しつつ、それらが自然開発への著者の強い信念をもってまとめ上げられている。その圧倒的なボリュームからくる読み応えは、大きな疲労感とともに、読後の感動につながるであろう。労作!! /以下余談。15年程前からの積読本。タイトルから気楽に読み始めたが、まさかこれほど読むのが大変だとは思わなかった。僕の、歴史や地理の知識不足も大きいことを認めつつ、今は心地良い読後感を味わっている。面白かった。2014/02/09
ばるたんせいじん
3
土地の歴史というのは谷合を流れる川の水を水利として利用することで稲作を成り立たせたことから始まった。溜池を造ることさえ大規模な労働力を従わせなければできなかった。近世以降大河川の流路を変えるという大規模な土木事業によって大稲作地帯を作り出した(大阪平野、濃尾平野、新潟平野)。近代以降干拓事業によって海に面する都市部の多くの場所が新たに生み出されたなど川と土地の歴史をあまりに自分は知らなすぎた。2014/11/03