出版社内容情報
人間の歴史にとって風土の果す役割は大きい.風土が人間によって容易に変えられぬ枠であるにせよ,それをどう利用するかは人間の側の主体的条件にかかわる.人間は風土とどのようにかかわりつつ今日に及んだのか.農業技術の変遷と生産関係の発展段階をたどりながら,世界史の背景に新たな光をあてようと試みるユニークな文明史論.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スズツキ
3
タイトルからもっと概説的なものを連想したが、アジアを中心とした農耕論の本だった。同じ青版から名著として有名な『栽培植物と農耕の起源』が出ているが、それと併読するとなおよろしい。2016/02/17
MIRACLE
0
人間の歴史への風土(=自然環境)の影響について、農業のあり方とその違いから、検証した本。問題意識、農業技術の発展、それに伴う政治・経済の変容、日本農業の方向性の順に、論じている。表題は、「風土と歴史」である。しかし、実際に扱っているは、農業の歴史である。筆者は、ヴェルトの農業一元論を、支持している。しかし、筆者も本書で指摘しているように、人間の存在は、植生のあり方に影響をあたえる。それにより、複数の場所で、栽培植物が出現することは、起こりうることだ。よって、多元説の方が、仮説としては、妥当のように思う。2014/03/16
まりも
0
世界各地の気候と、その風土から発展した農業形態と政治機構の関連を俯瞰していく。乾燥地帯のため農業に灌漑設備が必要で、それゆえに中央集権が強いところでは資本主義が発達しにくい、など。なるほどなあ、と思った。日本の風土に合った短床犂を発明した農民を冷笑した明治時代の学者をぐっさりとやってる。学者の机上の空論的農業書はあてにならないと言っている。著者がどれほど土に触っているのかは書かれていない。2024/04/04