出版社内容情報
自然現象とちがい,生きた人間の日々の営みを対象とする社会科学において,科学的認識は果して成り立つものだろうか.もし成り立つとすれば,どのような意味においてか.この問題に正面から取り組んだ典型的な事例としてマルクスとヴェーバーを取りあげ,両者の方法の比較検討の上に立って社会科学の今後の方向を問う.
内容説明
自然現象とちがい、生きた人間の日々の営みを対象とする社会科学において、科学的認識は果して成り立つものだろうか。もし成り立つとすれば、どのような意味においてか。この問題に正面から取り組んだ典型的な事例としてマルクスとヴェーバーを取りあげ、両者の方法の比較検討の上に立って社会科学の今後の方向を問う。
目次
1 社会科学の方法―ヴェーバーとマルクス
2 経済人ロビンソン・クルーソウ
3 ヴェーバーの「儒教とピュウリタニズム」をめぐって―アジアの文化とキリスト教
4 ヴェーバー社会学における思想と経済
著者等紹介
大塚久雄[オオツカヒサオ]
1907‐96年。1930年東京大学経済学部卒業。専攻は西洋経済史
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
96
この中には4つの講演集が収められています。何度も読んでいつも大塚さんの作品を読みたくなると取り出す本です。軽く読めてしまうし、ウェーバー社会学とマルクス経済学について分けて講演して社会学の方法論のような感じを受けます。また経済人ロビンソン・クルーソウについて国民経済の基本的な考え方を教えてくれます。2016/01/31
まえぞう
17
岩波新書の高校の新科目「歴史総合」に関する本で紹介されている著作を読んでいくことにしました。15冊あります。1冊目は半世紀以上前の有名な作品で、高校か大学の時に読んだような記憶があります。ヴェーバーの考え方の紹介を中心に、社会科学の方法が論じられます。2023/05/07
nobody
14
大学に入ってすぐアタリマエのことを大言壮語しているだけの学問に失望した。そうとるのはお前の頭が足りぬからだ? 大塚も「これはまあ、ある意味ではあたりまえのことなので」と言っている。マルクスの「学者は解釈してきただけ」との言が改めて力をもつ。ウェーバーも大塚も畢竟世を凌いでいくために学問という装飾をまとったとしか思えない。人間の意志が自由になるほどその行為の主観的意味は学問的に解明しやすくなるので社会現象における因果関係は把握しやすくなり自然科学よりも一層確実に客観的認識が成立すると大塚・ウェーバーは言う。2018/07/03
白義
12
ウェーバーを読むための最適な入門書。また科学としての社会科学の特徴を一番分かりやすく描いた本のひとつ。マルクスとウェーバーを比較しながら、マルクスを補い超えるためにウェーバーの方法をクローズアップする、的確な入門書になっている。マルクス成分は少な目。経済と宗教的倫理、心理のダイナミズムを総合的に把握しようとしたウェーバーに学ぶところは大きい。社会学でよく問題になるピューリタニズムのエートスもとても明晰に解説され、儒教のエートスと比較することで卓抜した比較文化論の導入にもなっているのがいい2012/06/11
かみかみ
9
経済史学の泰斗による講演録。一見連続性が見出しづらいマルクスとヴェーバーの思想について整理することができた。そういえばマルクスの「下部構造(経済)が上部構造(政治、道徳、宗教)を規定する」という論はヴェーバーにも継承されているんだった。他にもヴェーバーの著作を引用しつつ、彼がプロテスタントと儒教とが正反対の性質の宗教であること述べている「儒教とピュウリタニズム」が興味深かった。原罪と堕落を起点するプロテスタントの人間観と、性善説と現生肯定が根底にある儒教の人間観の対比。2020/11/25