出版社内容情報
西欧諸国の法律にならって作られた明治の法体系と,現実の国民生活とのあいだには,大きなずれがあった.このずれが今日までに,いかに変化し,あるいは消滅しつつあるのか.これらの問題を,法に関連して国民の多くがどのような「意識」をもって社会生活を営んできたかという観点から,興味深い実例をあげて追求する.
内容説明
西欧諸国の法律にならって作られた明治の法体系と、現実の国民生活とのあいだには、大きなずれがあった。このずれが今日までに、いかに変化し、あるいは消滅しつつあるのか。これらの問題を、法に関連して国民の多くがどのような「意識」をもって社会生活を営んできたかという観点から、興味深い実例をあげて追求する。
目次
第1章 問題
第2章 権利および法律についての意識
第3章 所有権についての意識
第4章 契約についての法意識
第5章 民事訴訟の法意識
第6章 むすび
著者等紹介
川島武宜[カワシマタケヨシ]
1909‐92年。1932年東京帝国大学法学部法律学科卒業。専攻‐民法、法社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
99
川島武宜さんの代表作であって名著だと思います。法律と日本人の特性であるはっきりと決着をつけたがらない性格についての論考です。それを法律の基本的な所有権、契約、民事訴訟などの観点から述べられていて参考になります。ただやはり若干古くなっているので、どなたか後継者の方でもいいので最近の状況を踏まえて出してくれませんかね。2015/11/22
獺祭魚の食客@鯨鯢
49
日本人には本音と建前という便利な処世術があります。 日本人には自己決定・自己責任という基準の方が負担になるらしい。どの知事もこぞって緊急事態宣言の指定をしてほしいと言う。いわゆる「お墨付き」の方が悩まないで済むと言うことなのか。学校で服装が自由よりは制服の方がよいと言うのと似ている。 法(のり)は矩(のり)でもある。前者は法令とも言うように為政者が定めるきまりであり、後者は道徳・倫理を言う。 「心の欲する所に従えども矩(のり)を踰(こ)えず」。孔子は70歳(古稀)の時の心境をこう述べた。「従心」2021/01/15
Miyoshi Hirotaka
41
19世紀の東アジアは西欧から見れば野蛮国。当時起きた外国人排斥事件は、西欧諸国の心胆を寒からしめるに十分だった。武力を背景に劣等国としての扱いに甘んじた治外法権の撤廃は喫緊の課題。明治期に整備された諸法典が極めて西洋的だったのはこのため。一方で、法典に鹿鳴館のような飾り物としての一面があったことは否めない。当時のわが国には近代的要素とは無縁のものが広汎に残っていた。「論よりも義理と人情の話し合い」、「白黒を決めぬところに味がある」というように今でも淳風美俗を尊び、訴訟が回避される傾向が強いのはそのため。2015/02/07
さきん
28
資本主義の大前提となる私有財産の保障およびそれを守る法律、契約に対する日本人の意識はいまだにずれているという本書の指摘。自分は悪いことばかりでもないとは思った。西洋社会もすぐに訴訟に持っていくのではなく、アジア的な内々の共同体で調停する、財産は共有するという考えにも理解を示すべきと思う。日本人自身もこの法意識のずれをあくまで客観的に卑屈にならずに大切にしていくべきだと思った。2020/05/12
たま
21
書かれた法と実生活でいきる法のズレを指摘する本。出版されたのは1967年なので多少の古さがあり、そこから今に至るまでにますます近代法的意識が浸透したとはいえ、完全にはなくならない日本人の義理の感情。私自身はそういった日本的な感情は好きなのですが、その感情が全ての法律行為に適するわけではもちろんないし、グローバル社会とのすり合わせという課題があることも考えさせられます。2013/04/15
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