出版社内容情報
現象に内在する精神とは? 精神のエコロジーとは? 科学と哲学をつなぐ基底的な知の探究を続けたベイトソンの集大成。その生涯にわたる思索の足取りをたどる。上巻はメタローグ・人類学篇。頭をほぐす父娘の対話から、隠喩と類比を信頼する思考の方法、集団間の緊張を高める「分裂生成」の型とそれを回避する「プラトー」の概念まで。
内容説明
現象に内在する精神とは?精神のエコロジーとは?科学と哲学をつなぐ基底的な知を求めたベイトソン。その生涯にわたる思索の足取りを辿る。上巻はメタローグ・人類学篇。頭をほぐす父娘の対話から、類比を信頼する思考法、分裂生成とプラトーの概念まで。(全三冊)
目次
序章 精神と秩序の科学
第1篇 メタローグ(物はなぜゴチャマゼになるのか;フランス人は、なぜ?;ゲームすること、マジメであること;知識の量を測ること;輪郭はなぜあるのか ほか)
第2篇 人類学研究における形式とパターン(文化接触と分裂生成;民族の観察データから私は何を考えたか;国民の士気と国民性;バリ―定常型社会の価値体系;プリミティヴな芸術のスタイルと優美と情報 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
42
放っておくと物がゴチャマゼになるのはなぜ?普通かつ単純に娘さんの質問。それに対し父親の導き出した解。これって 僕を理系に導いたエントロピー増大の法則!初っ端から親子の会話に熱力学第二法則に出会えるとは思わなかた。そうか、熱力学第二法則は日常生活に普通に存在していたんだ。グレゴリー・ベイトソンさん 初読み。ていうか、この著者知らなかった。もう、40年前に亡くなった文化人類学者らしい。何で今頃?岩波文庫の新刊にこの本があり、表紙の画に惹かれ手に取り、中身拝見。ん?親子の対話形式の考察に惹きつけられ、即購入。2023/06/22
roughfractus02
12
世界は生きている。安定は言語で分節した世界の捉え方であり、人間なる語も西洋ローカルの考えである。生物学、人類学、精神医学、生態学を渡る著者の40年弱に渡る論文を集めた本書(全3冊)は娘との7編の対話(メタローグ)から始まる。冒頭の対話では人間の分析・総合的世界構成が効かない動的世界を、ごちゃ混ぜなものは復元できないと逆問題から考え、人類学調査では他文化に西洋語のラベルを貼る際の思考のプロンプト場面を自らの失敗例で示す。その仮止め思考はバリ島でプラトー状態を見出していく(本巻は人類学領域の第2編まで収録)。2023/05/21
mim42
10
稀代のジェネラリストによる渾身の一冊(の1/3)。慧眼に驚かされながらの読書。あらゆるものに共通する構造抽出の旅。生物から文法、社会まで。問題圏は後のドゥルーズ=ガタリに通ずるが、目的やアプローチは真逆。著者は理論と実証の関係を重視する側の人だと。人を食ったような怪文章でもなければ文献ループに囚われてもいないので好感が持てる。国民性の話題などなかなか時代精神強めの主張もあるが、後半の絵画分析からはダブルバインドを感じた。フロイトのエピステーメー下なれど一定の距離感。意識を張ることへのコスト感覚は時代先取り2023/09/25
Yoshi
7
今日の行動科学が「帰納性の偏重」に病んでいることのあらわれである。基底的な知とのつながりを失ったところで、いくらデータを集めてみても、まっとうな科学は始まらない。 これは本当にそうだと思う。基底的なものを否定する哲学が科学にも広がっていて、それは科学なのだろうか? 前半の対話の中に、かなりのメッセージが込められている。全般的にフロイトの影響を強く感じた。夢と動物の認知に関する考察は面白かった。意識に関しては言語と結びつけすぎだと感じた。2023/09/27
kentaro mori
4
7つのメタローグ要再読。●いいか。肝腎なところだぞ。パパとおまえの問答の目的は、その「ルール」を発見することにあるんだ。それが「生きる」ことなんだとパパは思う。生きることの目的は、「生きるゲーム」のルールを発見することにある。いつも変わってしまって、決して捉えることのできないルールをね。●英語の文の途中までを聞いて、残りの部分のシンタクスの構造を推測することが可能である。樹木の地上に出ている部分を見て、地下にある根の存在が推測できる。このとき、上の部分が、下の部分についての情報を提供している。実際に描かれ2023/11/29