出版社内容情報
私たちこの世の生き物すべてを、片やアメーバへ、片や統合失調症患者へ結びつけるパターンとは? 日常の思考の前提を問い直し、二重記述、論理階型、散乱選択といった道具立てによって、発生も進化も学習も病理も包み込むマインドの科学を探究したベイトソン(1904-80)。そのエコロジカルな認識論の到達点を自ら語った入門書。
内容説明
私たちこの世の生き物すべてを、片やアメーバへ、片や統合失調症患者へと結びつけるパターンとは?日常の思考の前提を問い直し、二重記述、論理階型、散乱選択といった道具立てによって、発生も進化も学習も病理も包み込むマインドの科学を探究したベイトソン(1904‐80)。そのエコロジカルな認識論の到達点を自ら語った入門書。
目次
1 イントロダクション
2 誰もが学校で習うこと
3 重なりとしての世界
4 精神過程を見分ける基準
5 重なりとしての関係性
6 大いなるストカスティック・プロセス
7 類別からプロセスへ
8 それで?
付記―時の関節が外れている
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
44
読み易い文章ながら、概念として理解できない感触に他のレビューを見てみる。なるほど、皆、分からないながら読んでいるのね。機能でなく関係というのを精神分析から着想を得ていることからも、絶対的な真理のようなゼロ地点は無い、ということは底辺に流れている。人間の認識能力は要素や機能としての価値を捉えるが、自然(カント的には物自体)は人間の都合を超越しているのではないか。ただし著者は物自体として神秘化したり諦めたりするのではなく、精神との関係の中で考えようとしている。読者の方は、既存の知の枠組みの再検討を迫られる。2023/09/09
YO)))
17
主に論理と情報の観点から、自然(とりわけ進化)と精神の成り立ちと構造に迫る。 両棲類の卵の成長において、精子の突入した箇所によって背と腹の面が決定されるが、左右を決定する情報が外から与えられるタイミングはなく、「すべての子午線を斜めに横切り、いずれの子午線にも左右の区別を与える螺旋状の関係が保持されている」のである、という話にめちゃくちゃ膝を打って凄いと思った。2023/05/16
加納恭史
15
大書のプロティノスのエネアデスを読んだ後、現代の良い書物はなかなか見つからないと思った。ふとしたキッカケでこの本を見つけた。イントロダクションの冒頭で、聖アウグスティヌス「神の国」の言葉がある。「目にも見えず、言葉にならぬ美を湛えたる至上の神から摂理が下り地上の万物を満たしたことを、プラトン主義プロティノスは木々の葉、木々の花をもって証明する。これらの儚き命が、かくも完璧にかくも繊細に仕上げられた美を有するとは、それが神より降りた証拠でなくて何であろう。神はその不変の美を万物に永遠にわたらせたまう」。2025/04/06
roughfractus02
12
帰納推論を統計で強化する実証科学由来の現代のデータ主義的世界観は、データを集める企業や国家の権力を基盤とする。一方、生命の適応と変異による反脆弱な力の範囲を進化論的に知悉し、西洋的な人間中心主義を介入させる人類学調査の権力を注視する著者は、自己を固定する論理と権力を避け、帰謬法とアブダクションを駆使して環境の変異と共に動く考え方を試行錯誤する。生物学、人類学、精神医学、生態学へ自らシフトし、結果としての統計より確率過程自体に寄り添う著者の論理は、環境との関係次第で具象・抽象を生む精神(mind)を見出す。2023/05/22
またの名
11
異端は絶許なカトリックやマルクス主義の学生の方が常に必要なせいか思考の前提を考える能力は高いと述べ、米国の人々と言えども得意じゃない作業に挑む何かしらをキメた突飛な本。両眼で見える光景が異なる視差parallaxによって立体的認識を可能する時にも必要な差異が、明瞭に理解できる程度まで大きくなった状態をしか感覚器官は知覚できないことを起点に、議論は多方向へ散逸していく。エネルギー量的に無でも書類が到着しない事実は到着した場合との差異を産み、諸現象が論理階型の差異によりメタレベルやメタメタレベルに区別される。2025/01/03