出版社内容情報
ヒトの発生論(第7巻),動物生態学および心理学(第8,9巻)から不妊症の問題(第10巻)までを扱う.古典からの伝承,漁夫や猟師から聞いた話,自らの調査研究に基づく叙述は,現代の批判にも耐える見事な描写となった.(全2冊完結)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
99
発生論が本格化し動物の生態や心理及び病態を扱う下巻。後世人加筆の終盤を含め人間発生論は誤謬が目立つが、個体発生の進展と世代の積み重ねの形相の不変性には著者の天体論のモチーフが重なる。漁夫や猟師からの見聞と思しき動物の育成法や逸話の数々は、風説的な部分も相まって、当時のマケドニア・ギリシア界隈の生活観が伝わる。己の臆病さを心得ていると評価される托卵者カッコウ、近親相姦が悲劇となるラクダやウマの逸話などの取り上げ方に風土を感じたり。術語定義の明確化は膨大な資料の合理的統合に寄与し、西洋科学文明の礎石となった。2023/08/23
壱萬弐仟縁
10
本文が半分、訳注、解説、あとがき索引が半分を占める。実は、本著は高校保健体育の重要な参考文献として指定してよいだろう。理由は、思春期の生徒が抱える問題を扱っているためである。そうかといっても、老齢の性についても書いてので安心してほしい。要するに、人の生殖について総合的な知識を得ることができる。妊娠の場合も個人差があることが理解される(32-33頁)。アリストテレスの時代と今の生物生息環境と、どちらが快適であったろうか。今では福島沖の魚介類からはなおも基準値以上の放射性物質が検出。自然との共生に活路がある。2013/03/12
ヴィクトリー
3
諸動物の生態、病気と(偽書の10巻で)ヒトの不妊症を扱っている。所々で観念的な記述(妙に男性=雄、優位なところとか)もあるものの、漁師などから取材したと思しき現実的な記述も多い。所々誤った事も書かれているが、ヒトから獣、鳥、魚貝、虫に至るまでの広範な動物の構造、生殖、生態をまとめている事が凄い。またこれが、彼の哲学の一部というのだから驚くしかない。彼こそまさに「知の巨人(最近では宣伝文句として安易に使われている様だが)」の名に相応しいのだろう。2013/05/29
AR読書記録
2
こちらのほうが、上巻を読む前に想像した内容に近い。もちろん全てを自分で見て書いたわけじゃないだろうが、伝聞であれ原典のあることであれ、これだけの情報をあつめたことがすごい。動物博物誌だよね。ところで、うなぎ情報に割かれたページ数が妙に多い気がするのですが。うなぎ好きだったのかな... 注では相変わらず訳者さんの苦労がしみじみ伝わってきて、こういっちゃ申し訳ないが面白い。「この文もおかしい。いろいろに訂正されてあえるが、たいして分かりよくもならないので...」とか。諦めましたね...2013/12/19
syokou
1
生物学はアリストテレスの体系を理解するうえでの基礎なのだとか2012/09/10