出版社内容情報
幕末から明治へ、激動の時代を生きた内村鑑三。傑出した宗教家はキリスト教国アメリカと明治日本で、いかにして天命を悟ったのか。【新訳】
内容説明
幕末から明治へ、激動の時代を生きた内村が、自らの魂の変容を記した記録。札幌農学校に進学した青年は上級生に強制されてキリスト信徒となり、新しい自分と世界とを知る。二十四歳で単身渡米、養護院で働き大学に通うなかで、徐々に天命を悟る。傑出した宗教家は、キリスト教の「聖地」アメリカと明治日本で、何を見、経験し、考えたのか。
目次
第1章 異教
第2章 キリスト教に入信
第3章 初期の教会
第4章 新教会と信徒の説教
第5章 世の中へ―感情的キリスト教
第6章 キリスト教国の第一印象
第7章 キリスト教国にて―慈善事業家のあいだで
第8章 キリスト教国にて―ニューイングランドの大学生活
第9章 キリスト教国にて―神学に触れる
第10章 キリスト教国の実感―帰国
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
83
岩波文庫で再読です。内村鑑三の自伝的記録なので、興味深く読むことができました。いかにキリスト教信仰を抱いたかを追うことで、心の霊的歩みと魂の変容を知ることができます。アメリカと日本で何を見て、感じてきたか。それはまさに新しい自分との出会いであること他ならないでしょう。同じキリスト者として感銘を受けました。2018/01/03
壱萬弐仟縁
61
K図書館より、来週の某面接に向けて下準備。キリスト教国ですら鍵を使っている。家の鍵の防犯に驚く鑑三氏。鍵は金庫やトランクだけでなく、あらゆる扉、窓、タンス、引出し、冷蔵庫、砂糖つぼ、なにもかもに鍵・・・(153頁)。言うまでもないが、カギは他人を信じていない証だ。それで宗教を信じるというものねぇ。。また、アメリカという異国で日本という母国を相対化する視点の重要性は今も変わらない(168頁)。道徳的改革者はすべて教師。学問を教えながら精神も教える人生の教育者(pedagogues)は素晴らしい(259頁)。2023/12/11
優希
35
再読です。内村鑑三の自伝的キリスト教の証を感じることができました。何故キリスト教を抱いた想いを追うことは、霊的歩みと魂の変容を見ているようです。アメリカと日本で何を見て感じたか。それは新しい自分との対面だと思えてなりません。2023/09/26
くりまんじゅう
4
内村鑑三の札幌農学校時代から、渡米、帰国に至るまでの、信仰の目覚め、挫折、そして確信に至るまでに心の動きが分かる。私は余り熱心ではない信徒だけど、「第10章 キリスト教国の実感ー帰国ー」は最終章に相応しく、説得力があり、大いに共感した。あの時代にここまでの思いを貫けたのは、内村が武士階級出身だった大きいのではないか、と思う 。明治の日本人に改めて感動した。2018/04/15
読人
2
内村鑑三の著作を読むのは三作目だが、他の二作と違ってこれは読むのに疲れた。書名の通り宗教性が強すぎて、あまり興味を持てなかったのが一番の理由だろう。ただ、著者が米国に渡って日本を外か眺めることでその良さを再認識していく過程は面白かった。「平和でないもののために真に平和なものを捨ててしまった」と言う嘆きは深く感じられた。新渡戸稲造が「武士道」で書いた当時の日本の道徳観念がいかに優れていたのかが実感とされる一文でもある。2019/01/04