出版社内容情報
日本語とはいかなる言語か? 西洋から移入された言語学の枠組みではなく、平安~明治期の文人や国学者の探究を跡づけ日本語の本質に迫らんとする、時枝誠記(1900-67)の高らかな宣言とその豊饒なる成果。(解説=藤井貞和)
内容説明
日本語とはいかなる言語か。『万葉集』『古事記』の注釈や、「てにをは」の役割、仮名遣いや表記法など、平安から明治期までの歴史のなかで、文人・国学者らが捉えてきた日本語の姿を明らかにする。西洋から移入された言語学の枠組みではなく、自前の「国語学史」から日本語の本質に迫らんとする時枝誠記(1900‐67)の高らかな宣言とその豊饒なる成果。
目次
第1部 序説(「国語」の名義;国語学の対象;国語学と国語学史との関係;国語学史編述の態度;明治以前の国語研究の特質と言語過程観;国語学史の時代区劃と各期の概観)
第2部 研究史(元禄期以前;元禄期より明和安永期へ;明和安永期より江戸末期へ;江戸末期;明治初年より現代に至る)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Happy Like a Honeybee
8
ソシュールなどを読む前に、日本における国語学について学ぶ。 江戸期より活発化した国語。 時枝氏により細かい時代区分化され、各時代における特徴を述べている。 岩波講座を書籍化したため、しっかりした構成となっている。 現代でも解明されていない、いろは歌の作者。 晩年期における吉本隆明氏との論争。 学術的なため関心がない人には厳しい内容であろう。 2018/04/03
大臣ぐサン
3
「日本語」史ではなく「国語学」史という観点が自分にとってはとても新しい発見だった。なるほど、今まで「国語」という言葉に何の疑問も持たなかったが、国語はあくまで国語であって、決して日本語とイコールではない。この本は戦前に書かれたものであるから戦後の国語に関しては全く触れられていない。作者が敗戦後の国語教育をどのようにとらえていたのかとても気になる。2020/08/15
miyuki
3
言語、殊に日本語を考えるとはどういうことかについて、近代に成立したような言語学観――つまり西洋の言語理論をいかに当てはめるか――ではなく、零からことばの在り方を吟味して研究されてきた明治以前の伝統的な日本の語学研究、学説が、いかなる時代にどのような発想や影響によって出現してきたかを、史的に辿っていくことで説き明かそうとする本。近代以降文法、音韻、仮名遣いなどといって呼び習わすそれらが、いかなる発想から発見され研究されて、成立してきたかについて、時代ごとに明確な概念把握の違いがあったことに気づかされた。
yutaro sata
2
国語学の研究史を時枝さんがまとめた本。有難いですね。2022/04/24
あすかい
1
西洋言語学によって発見されたある種の文法的現象を普遍とみなし、分析される言語にその文法と対応する事柄が存在することを前提とした態度に疑問を感じていたところ、たまたま手にしたこの本がそうした西洋言語学を輸入した分析態度と対立する、日本の言語学の歴史を基にした言語本質観を提示しており非常に参考になった。著者の方法論についてはいくつか分からないところもあったが、国語学(言語学)は何よりもまず対象に対して発見的態度をもって臨まねばならないという氏の思想については全面的に同意したいと思う。2017/11/17
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