内容説明
「彼の一生を語ることは、明治・大正史を語ることである」。痩躯鶴のようなこの人物、元老・山県有朋は、広く張りめぐらせた自らの派閥を背景に政界に君臨しつづけ、内閣を製造しては倒壊させた。烈しい権力意志に貫かれた政治家の生涯を、明治・大正期の日本国家の軌跡とともに端正な筆致で描き切った評伝の傑作。
目次
1 生い立ち
2 奇兵隊とともに
3 「一介の武弁」
4 組閣
5 日清戦争と第二次内閣
6 「元老政治」の中で
7 築かれた権力の座から
8 老い行く権力者の喜憂
9 晩年とその死
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
92
(2023-67)【図書館本】銃撃事件で死去した安倍晋三元首相の机上に、この「山県有朋」が残されていたことを菅元総理の追悼の辞で知った。司馬遼太郎の小説を読んでいる為か、私は山県有朋に対してはあまり良い印象を持っていない。ただ、比較的中立な立場で書かれたと思われるこの評伝に於いても自ら築いた派閥を背景に総理となり、晩年でも元老として政界に君臨し続け烈しい権力志向に貫かれた政治家として描かれていた。果たして安倍氏は何を思って読んでいたのだろうか?彼が目指していたのは現代の山県有朋だったのであろうか。★★★★2023/07/08
壱萬参仟縁
62
日本史Bの近代をやっているクラスには、紹介したい。日露協商か日英同盟かの争い。前者は伊藤博文および井上馨によって唱えられたが、韓国に関してわが国と同様に重大な利害関係をもつロシアと交渉し、満州についてロシアの優越を承認する代わりに韓国にわが国の優越をロシアに認めさせるべきと主張。後者は元老および桂首相の唱えたところ。ロシアと対立関係にあるイギリスと同盟を結んで対抗、牽制を主張。山県は熱心な日英同盟論者(119頁~)。山県は奉天の会戦後参謀総長として桂首相に意見書提出(128頁)。原は聞き上手(206頁)。2022/08/06
ぴー
54
明治〜大正史のキーパーソンとして登場する山形。山形を知るということで今回は本書を読んでみた。初版が昭和30年代ということを念頭におきながら、本書を読み進めた。黒船来航〜幕末を過ごした山形とって、国家安定が何よりも大切だったのだろう。神経質、慎重、寡黙、政党嫌い、権力固執等の印象を受けるのは、そのためなのかもしれない。晩年も大戦後の日本を考えていたところが興味深い。伝統的な評価の山形は、本書で理解することができた。近年の山形はどう評価されているのかが気になる所です。2024/12/30
kawa
39
明治・大正の政界のゴッドファーザーを担った人物の評伝。学者らしい筆致で一読したのみでは、彼の歴史上の功罪がよく掴めない。政党政治を嫌っていたとされる山縣氏、その理由は明治憲法がそのような政治体制を予定していないと明確。しかし、それを言ったら自らが担った元老体制も同様だと言う自己矛盾に陥るように見える。彼をめぐる疑獄事件や統帥権の問題については全くと言っていいくらい触れられていない。2025/02/12
Tomoichi
29
安倍元総理の国葬で菅前総理の弔辞で取り上げられていて話題になっていた本書、内容的にはステレオタイプな感じでした。書かれた時代かな?2022/12/24