内容説明
「民衆政治家」大隈重信が政界に復帰し組閣した時点から、「平民宰相」原敬の登場、護憲三派内閣の成立を経て政党内閣期が始まるまでの10年間の大正政治史。政党政治への期待と幻滅の時代を、国際環境や国内の社会運動の動向とともに描く。政治家たちの人物描写も興味深い。
目次
第1章 第一次世界戦争の勃発(「民衆政治家」の復活;参戦と「二一ヵ条要求」;元老・大隈・世論)
第2章 大戦の波動と対応(超然内閣の再現と諸政党;ロシア革命とシベリア出兵;時代転換の兆し)
第3章 「世界の改造」とわが国(パリ平和会議;高揚する国内不安;普選運動の挫折とその前後;政党政治の実態)
第4章 相対的安定への過程(ワシントン会議;「中間内閣」の季節;護憲運動とその勝利)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
D
40
二十一か条の要求による国際関係の亀裂、日英同盟の破棄による米英の接近。ここらへんが、大きな外交上の転換点だったと思う。2025/05/17
ぴー
7
当時の人々は政党内閣を期待していたが、実は大きく異なっており、不満を抱いたことを知った。原敬が山縣と上手く付き合っていたのは、原のカリスマ?だと思った。昭和に発売された本だが、とても勉強になりました。 2022/11/06
バルジ
7
『明治政治史』に続き大正時代を政治史をメインに据えつつ概括的に論じる。本書の特色は政局や著者一流の人物評が織り込まれながらも労働運動や社会主義運動の動向も相当な紙幅を割いて記述している点であろう。そしてその勃興する社会運動に対し、恐怖心を抱きつつも権謀術数を巡らし対応する支配者側が描かれる。そういった意味で本書での原敬の評価は決して芳しいものではない。民衆を警戒し、多数を以って議会を圧倒する強権的な姿勢は「平民宰相」の一面を浮かび上がらせている。2019/07/06
れぽれろ
6
大正時代の教科書的な通史ですが、人物の動き中心で比較的読みやすいです。大正期を通じてデモクラシーは実は盛り下がり、大正末に人心は既に政党内閣から離れていたという結論は今日的にも重要。脚注がかなり充実していて本文より面白いのも特色。2022/06/30
馬咲
4
第一次世界大戦後にさらなる権益拡大を目指した日本だが、日英同盟解消に加え、ロシア革命により日露関係も白紙になったことで対立するアメリカへの交渉力を欠き、軍縮と(列強の既得権益維持の意味合いの強い)平和を志向するワシントン体制の下で国際的に孤立した格好となる。これらは国内では民衆の社会運動を活性化させ、支配層からすれば国内外両方からの不安に苛まれることになった。同著者の『明治政治史』では、維新以来「民族的危機感」が政治と国民を結ぶ紐帯となっていたが、それは日露戦争勝利の高揚から綻んでいったと考察されていた。2022/12/29