内容説明
明治期の政治・経済・社会を包括する通史を、豊富な史料を織り込みつつ端正な文体で叙述した古典的著作。下巻では、帝国議会開設から大正政変後までを扱う。強烈な民族的危機感によって成立した明治国家が、日清・日露戦争を経て、次第に民族的誇負を強めていく過程を描く。
目次
第3章 民族の独立追求(明治二三年前後のわが国をめぐる国際状況;初期議会・条約改正;日清戦争;戦後政治の展開;軍備の拡張と階級的文化の進行;日英同盟成立の前後;日露戦争)
第4章 帝国建設の進展と政党勢力の上昇(「戦後経営」;外交の新しい局面と新しい課題;明治の終焉;「大正の政変」)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AKa
4
上巻と比べて密度が落ちている感じがするが、読み易くなっているとも言える。特に記述の多くを占める外交に関する箇所には「筆が乗ってるな」と思ってしまうところがある。また、外交や戦争を描く視線は、「日本対◯◯」ではなく、第三国にも気が配られている。上下巻合わせて通史のお手本のような書ではあるが、上巻から40年近く経っても完成させることができずに鬼籍に入られたということは、通史を書ききることの困難さをも物語っているとも言えよう。2019/06/12
穀雨
3
添削が間に合わなかった関係から、日露戦後の第4章だけ若干分量が多くなっている。政党ではなく藩閥勢力による支配だったからこそ明治日本は順調に発展できたという論旨で、そういう見方もあるのかと興味深かった。経緯の複雑な大正政変などもわかりやすく説明されていた。2021/05/02
バルジ
3
上巻に続き下巻も読了。下巻は人物が活き活きと描かれ、民族的高揚感が一段落した後の「ゆらぐ」大日本帝国の姿を描いている。山県有朋の飽くなき権力欲が嫌というほど頻出するので、本書後半部はまるで『山県有朋』を読んでいるよう。桂太郎の晩年不遇感や奇妙な立ち位置で傍観者的立場に終始する西園寺公望へのやや冷ややかな評価も気になるところ。民族的高揚感が一段落し様々な「ゆらぎ」を内政・外交双方(外交面では特に日米関係について)から描き、一つの通史として纏め上げる著者の力技には感嘆するほかない。2019/06/11
馬咲
2
日露戦争後に自信を高めた国民の民族的危機感の緩和とその反動的な利己主義の風潮、産業革命で成長した財界ブルジョワ層の政治的影響力の増大などの社会的経済的変化に直面した支配者層の対応が後半の中心。藩閥と政党の均衡体制から政党政治と財閥の「連携」体制への移行。思想・学問の内容を学問的論争から政治問題へと変質させる契機となった大逆事件。新たに民族的危機感を高める要因としての対米関係の強調など、昭和に通ずる材料が揃っていく。支配体制と社会経済構造の相関関係を意識した立体的な叙述が、古典としての価値を高めている。2022/08/21
大臣ぐサン
2
激動の明治。憲法が制定され、日清日露に勝利し近代国家の仲間入りをした日本は虐げられたアジアの雄であったことは間違いない。しかし、その先に何があるのかを我々は知っている。2019/10/29