出版社内容情報
明治維新とは,独立確保をめざす「民族革命」であった.上巻は開国から帝国議会開設まで.(解説=前田亮介)
岡 義武[オカ タケヨシ]
著・文・その他
内容説明
日本の政治史学の礎を築いた岡義武(1902‐90)が明治期の政治・経済・社会を包括的に描いた通史。開国から帝国議会開設にいたる近代国家の形成過程を扱った上巻では、明治維新を、民族の独立確保のためになされた「民族革命」として位置付ける。多くの史料を織り込みつつも歴史叙述として均整のとれた古典的名著である。
目次
第1章 序論=江戸封建体制とその瓦解(体制の構造と内部的矛盾の発展;強いられた開国;尊攘運動の奔騰;衰退する幕府権力;瓦解)
第2章 近代国家への移行(新しい支配体制の構築;明治新政府の課題と政策;起伏する政治的不安;自由民権運動の展開;朝鮮問題と条約改正交渉 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hiroshi
5
民族革命としての明治維新論が書かれた本。下巻は立憲政を導入した明治国家の発展過程が書かれる。文章が綺麗で内容も簡潔にきちんと書かれている。江戸幕府は複雑な身分的秩序によって厳しく規律された封建社会である。大政御委任により幕府が政治を運営した。朝廷には力はない。そして停滞の社会であった。商品経済の発達により社会に不満が高まっていた中で外圧に直面した。下級武士は外圧に対する民族的反撥により攘夷運動を行い、それが尊皇攘夷、尊皇倒幕と変わっていって、薩長のリーダーシップの下に明治維新となり、天皇制国家が生まれた。2025/06/07
穀雨
4
政治史の大家による古典だが、思っていたより読みやすく、予備知識がほとんどなくても楽に読み進めた。注釈が全体の4割ほどとかなりの分量だが、政治家の興味深いエピソードなどを多く紹介していて飽きさせない。序論として取り上げられている幕末史も、簡潔ながら要点をしっかり拾っていて秀逸だった。2021/05/01
馬咲
2
明治維新=民族独立確保の為の革命という定義から、民族的危機感を煽る帝国主義的国際情勢を背景に、薩長政府と彼らに不満を抱く非藩閥士族層の対抗関係を基本軸にした政治史が叙述される。後者の主導した自由民権運動に「民権は国権を高める国民創出のため」という国家主義的性格があった点は、民族独立の観点からすると政府の国民観念と類似する。民権運動と政党政治伸び悩みの原因を、政府による取り締まりだけでなく民権派政党自身のアンチ藩閥が目的化した体質や富裕層の支持確保に執心したことにも求める。注も解説も充実していて読みやすい。2022/08/20
大臣ぐサン
2
士族の没落していく姿が悲しいねぇ。2019/10/17
バルジ
2
個別的な部分での古さは否めないものの、明治維新を「民族革命」と定義し「民族独立」という大目標を提示した政治過程を叙述する。マルクス主義の薫りを漂わせながらも単純な善悪二元論を採らず複雑な政治・外交過程を史料を駆使して描くそのスタイルは圧巻である。また前田亮介先生の解説も論文とも見紛う骨太な内容で本書への理解、ひいては日本政治史学における岡の功績をも知ることが出来る。2019/05/12