内容説明
哲学は前6世紀頃、ギリシア・インド・中国でほぼ同時に誕生した―。京都大学で哲学を講じた野田又夫(1910‐2004)は、これらを哲学の三つの伝統と捉え、哲学の大胆な世界史的通覧を試みた。そのほか西田幾多郎・田辺元・九鬼周造など恩師の哲学の本質を述べた簡潔かつ含蓄に富む諸論考など13篇を収録。
目次
第1部(哲学の歴史について;西洋哲学の特徴;哲学の三つの伝統;西洋哲学と東洋哲学;ヨーロッパ人の世界像の変遷 ほか)
第2部(哲学史家としての朝永三十郎先生;西田幾多郎における東西の綜合;西田哲学とホワイトヘッド哲学;昭和六年頃の西田哲学;行為と弁証法 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
WATA
31
ギリシャ・インド・中国の3つの哲学について、その歴史と伝統をとらえ、その伝統の中に日本の思想を位置づけようとする本。難解な用語がなく読みやすい。特にギリシャ哲学を論理的、インド哲学を弁証的、中国哲学を修辞的と分類した部分の説明は分かりやすかった。また、日本の思想については「法然と親鸞の教えは、救いが信仰によって与えれる点でルターと似ている」「信長は全く非宗教的な人物であり、イタリアに生まれていればマキャベリの感嘆を得ただろう」など世界の思想を幅広く見たユニークな視点が多く、読んでいて楽しめた。2014/03/19
ラウリスタ~
13
名前しか知らなかった野田又夫の本を初めて読んだ。なるほど、西田、田辺、九鬼とかの一つ二つ後の世代なんだな、京都学派の後輩的な人か。中国、インド、ギリシャと哲学の三つの源泉として語った一般向けの分かりやすい講演や、「西田先生というのほこういう人で、田辺先生がそれに喧嘩を売られて、我々はびっくりしたものです、でも喧嘩をしたら仲良くなるのか・・・」てのりで、京都学派の哲学者たちの息づかいが聞こえてくるようなエッセイなど。戦前の大学で、どんな風に哲学が学ばれていたのか、とかそういった点は面白いかな。2014/09/11
さえきかずひこ
10
平易な文体で、古代の哲学ーギリシア、インド、中国ーの解説をしているが、西田、田辺、九鬼らむかし京大で活躍した学者についての論考はじゅうぶんに込み入っており、専門的でほとんど分からなかった。が、これらの論考を元にいろいろ調べてみるのも面白かろう…。さしあたりカントの哲学は大づかみにでも理解しなければならない気がしてきた。2017/05/16
amanon
6
タイトルで示唆されているようにインド、中国、ギリシャという人類における三大哲学の発生がほぼ同時期であるということに改めて新鮮な驚きを覚える。そしてその後ギリシャ哲学がキリスト教と結びつくことによって第四の哲学として変貌し、言わば主流の哲学となり世界を席巻するという流れを概観すると、その必然性は一体どこにあったのか?ということをふと考えてしまう。ただ、第二部の京都学派の先達についての物はかなりの歯ごたえで正直理解の程はあやふや。ただ、今は殆ど人口に膾炙されなくなった哲学者の名前に時代の流れを感じた。2014/06/16
シンドバッド
3
講演を中心にしてあることもあり大変読みやすい。2014/04/20