内容説明
権力はいかにして発生し、正統化され、崩壊するのか―一瞬も静止することのない大小の政治的状況に共通する法則を、ダイナミックかつ包括的に探った「政治の世界」。他に、「権力と道徳」「政治的無関心」など、「科学としての政治学」創造の試みたる十篇を集める。
目次
1 政治と政治学(科学としての政治学;人間と政治;政治の世界)
2 権力の政治学(権力と道徳;支配と服従;政治権力の諸問題)
3 政治学入門(政治学入門(第一版)
政治学)
4 市民のための政治学(政治的無関心;政治的判断;現代における態度決定)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふみあき
64
私みたいな無学な人間でも、さほど苦もなく普通に読める論考集。ただし鼎談形式の「政治学」だけは、聞いたこともない人名・書名・術語が頻出する嫌味な文章で、私の知能では読解不能だった。不偏不党は偽善、観照者の立場は無責任と言い切るところは、さすが行動する思想家らしいが、同時に「成功は政治の絶対目的」(ラッツェンホーファー)や、政治的な選択は「悪さ加減の選択」(福沢諭吉)であるとして、真の意味でのリアリズムを追求。なので、左派をも「電車のなかで大の字になって泣きわめいて親を困らせている子供」とぶった斬っている。2024/08/19
白義
22
純粋な政治学者としての丸山眞男を最もよく見渡すことが出来るアンソロジー。生ける巨竜のごとく複雑で止まることを知らない権力の世界に働く政治のメカニズムを、学問としての政治学の確立を目指しながら精緻に分析していて、今読んでも政治学入門としての水準は極めて高い。コミュニケーションから生まれる権力や、権力の組織化といったハードな話題、一般市民の政治意識とあるべき構えと思考といったより身近な話題まで、分かりやすくも当時の最新の成果、また歴史的熟慮が深く活かされているのがよくわかる名文揃いである2014/10/21
KAZOO
18
岩波文庫が丸山真男の「政治」に関する論文を十編ほど集めてくれて出してくれました。これは非常にコンパクトでいいと思います。「現代政治の思想と行動」など、机上でしか読めないのですが、屋外でも読める感じです。「政治学入門」や「政治学」など懐かしい内容です。わかりやすいので丸山は難しい、と思っている人はこの本から入るといいかもしれません。2014/08/01
びす男
17
丸山眞男による評論集。専門的な内容に立ち入った書というよりは、誰にでもわかるように「政治」というものについて語っているのが印象的。それでも、「政治的態度」や「支配と服従」などの章では政治学徒の僕にとっても目の覚めるような指摘が数多くあった。いつもそのつもりだが、この本は紛れもなく僕にとっての「教師」であった。素晴らしい、何度でも立ち返りたい。 書評 http://niksa1020book.blog.fc2.com/2014/06/10
またの名
14
イキリ政治学徒と左翼妹と教授(著者)の対話風入門でやたら兄より妹に味方する教授の発言は、紳士気取りの女子への配慮にもマルクス主義への贔屓にも見える。実際著者はマルクス主義理論を大いに援用し、戦争と革命ならより危険なのは戦争と仄めかす調子。しかし左翼もやりがちな敵を壮大な陰謀論の黒幕に仕立てる「敵に騙された」式の、例えば過ちの確証が出てきても敵の捏造やら策略やらを言い訳にする某政権周辺のような弁解は政治的責任の放棄で、自らの無能力の告白と断じる。国政のトップにいて平気で嘘を吐ける人間はさすがに想定してない。2018/05/22
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- 和書
- 父の生きる 光文社文庫