出版社内容情報
「人生はむずかしくはないが、とても不条理だ」。事業も生活も期待通りにいかない。さりとて打開する意志もなく、ただ偶然に身をまかせるばかり。あれこれと思いめぐらし、来し方を振り返るゼーノ。その当てどない意識の流れが、不可思議にも彼の人生を鮮やかに映し出す。独白はカタストロフィの予感を漂わせて終わる。(全2冊)
内容説明
「人生はむずかしくはないが、とても不条理だ」。事業も生活も期待通りにいかない。さりとて打開する意志もなく、ただ偶然に身をまかせるばかり。あれこれと思いめぐらし、来し方を振り返るゼーノ。その当てどない意識の流れが、不可思議にも彼の人生を鮮やかに映し出す。独白はカタストロフィの予感を漂わせて終わる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
71
題名は「ゼーノの意識」とあるが、「ゼーノの良心」と訳すべきかと迷ったと、訳者。吾輩は、「ゼーノの良心」がより相応しいと感じた。「意識」は、作家と交流があり、本作を褒めたというあのジョイスに引き摺られたのだろう。意識の流れの手法が本作でも使われている…そうとは思えなかった。患者である主人公は、精神科医に勧められフロイト流の精神療法の一環で回想を試みた。冒頭は煙草を止めようとして挫折を繰り返す苦い場面。だが、禁煙の決心は本当に決心だったのか。守るつもりのない禁煙の意志はまさに良心の疼きに繋がるはず。2021/09/04
まさかず
9
ゼーノにとっての健康ってなんだろう?思い悩まず、何かの役割を果たし、快活に過ごすことか? 何らかの責任を果たすための行動の抑制をしない。自己の欲望に「のみ」忠実。個人の自己か、社会の自己か。偏る男にしてみれば「人生は美しくもなく醜くもなく不可思議」であったろう。ひたすらの体裁と自己弁護。補填の為の愛。それでもか、だからこそか、理解あるアウグスタの愛のもと、結局素晴らしき人生と記す。それは美しくも醜くもあろうと足掻くことへの皮肉かもしれない。個人と社会の立ち位置の狭間で生きるものにとってはやはり不可思議だ。2023/07/14
Vincent
5
下巻もゼーノは変わらず絶好調でやりたい放題。呆れるばかり。彼の本性に気づいた人々の困惑をあえて描かないところも抜け目ない。ずるい。第7章の商事会社をめぐる話ではゼーノの友人グイードの人生転落ぶりが絶妙に描かれていて良い。その他アウグスタは一見地味ですが実は静かなる賢妻でダメ夫ゼーノを支えていましたね。確かに名作。2021/11/28
→0!P!
0
小説版アンチ・オイディプスとも言える、フロイト批判ということで大きな価値のある小説。技術(野山の開発、戦争、フロイト)は人をより不健康にする、というのはこの時代らしい考えかもしれない。タバコは、女遊びという逃げられない性癖のアナロジーになっており、どちらも敢えて取り上げようとすると、おかしなことになっていく。さらに言えば、精神分析の過程では、さも欲望をコントロールできない怪物のようだが、どこにでもいるお爺さんでしかない。(どちらかといえばグイードの方が怪物的) ある意味叙述トリックになっていて面白い。2023/03/24
にっつぁん
0
人生は人間のものではない 197-1982021/06/23