出版社内容情報
「お書きなさい。自分の姿が見えてきますよ」。医師の勧めで回想録を書き始めた主人公ゼーノ。嫉妬、虚栄心、背徳感、己を苛んだ感情をまざまざと蘇らせながらも、精神分析医のごとく自身の人生を淡々と語る。ジョイス『ユリシーズ』にもつらなる「意識の流れ」を精緻に描き出した、ズヴェーヴォ(1861-1928)の代表作。
内容説明
「お書きなさい。自分の姿が見えてきますよ」。医師の勧めで回想録を書き始めた主人公ゼーノ。嫉妬、虚栄心、背徳感、己を苛んだ感情をまざまざと蘇らせながらも、精神分析医のごとく人生を淡々と語る。ジョイス『ユリシーズ』にも連なる「意識の流れ」を精緻に描き出した、イタリアの作家ズヴェーヴォ(1861‐1928)の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
73
身勝手で我が侭な、生活には終われていない男の回想。少なくとも、上巻の250頁ほどまでは、やや退屈だった。直前にモーリアの傑作を読んだから、どうしても比較してしまう。さすがに上巻の終わり頃になって、男の身勝手が他人(妻や愛人など身内)を巻き込んできて、読み手としては息苦しくなり、作品の力なのか描かれる状況の切迫感なのか分からなくなった。2021/09/02
ノブヲ
19
気分のいいものじゃない。告白体小説。この語り手の初老の紳士は、担当する精神科医に促されるまま、過去の自分を改めて振り返る。2、3日まえの出来事からでいいと言われたが、彼の脳裡に去来したのは、幼少の頃、父親の眼を盗んで拝借した、初めて吸った煙草の味だった。思弁性と純文学との狭間で、という広義の意味からいえば、この作品もスリップストリームに属するかもしれない。ときどき、フェリーニの映画が頭を掠める。追憶。アフォリズムにも近い回想録。それは遠い日の甘い思い出か、それともすべて、口からでまかせのまったくの嘘か。2026/01/09
ぞしま
14
結婚のいきさつが下衆すぎて、腹が立つ人も多くいるのだろうと想像する、しかしこの吐露はあくまで回想であることも忘れてはならない。ふんだんな感情(自意識?)に満ち、推理小説的でもある、端々で笑い、引いたりしながら読んだ。そしてこの顛末をカルラに話してくだりは、もはやなんと言ってよいか分からない。 父との最期は妙にリアルで、笑えなかった。禁煙は特に何も。 文章(訳文?)が端正でその分抑制的というか、諧謔さやふざけ(?)が伝わらないような気がしなくもないのだが、どうなのだろう…。自費出版とは思わなんだ。2021/03/21
まさかず
11
正しく強い人物への強い憧れ、見えかくれする劣等感。「自分は偉大な人物だがその偉大さは内に秘められたまま開花していないのだと信じることは安易な生き方である」と語る。等身大の我が身、己の心の弱さを自覚した上での成長への道を歩む者の言葉に聞こえる。けれどゼーノは一貫して自分の弱さを都合よく他者のせいにする。内省はするが結論はいつも自分に都合のいい解釈。これが回想録でどこまで本心か、よくわからないまま読み進む。ただ隠すことのない利己に我が身にも思い当たる苦味を味わいながら。2023/07/10
中海
5
自伝風であり、舞台は作者の産まれたトリエステ(イタリアだが、オーストリアだった歴史がある)なので、つい本人と錯覚して読んでしまう。精神科医に何か書いてみればあ、と薦められて書いたようで。つらつらとした日常で、頼りない、子供っぽい(と印象を受けた)男性のひとりがたりで、淡々と三人の女性に結婚を断られたり、ふわーん、としている。後書きに本人は国籍はオーストリアで、結婚した家族はイタリア系で、なんか、定まらない自分の居場所を敢えて必死には捜していない、ふわーん、ほにょーんとした感じだった。2021/10/12




