内容説明
少年マルコが母親を捜してイタリアから遠くアンデスの麓の町まで旅する「母をたずねて三千里」の原作を収録。どこの国でも、いつの時代でも変わらない親子の愛や家族の絆、あるいは博愛の精神を、心あたたまる筆致で描く、エドモンド・デ・アミーチス(1846‐1908)の代表作。世界中の人びとに愛読されつづけてきたイタリア文学の古典的名作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
128
三年生男子の視点で綴るイタリアの公立小学校の一年間の物語。豊かな自然描写に紀行作家としての筆が光っている。悪童は放校し、虐待親は改心させたりして常に少年たちの清らかな心にフォーカスしている点や、反論の余地を与えない両親の助言などは著者の生真面目さによるものだろう。後者に関してはいささか窮屈なくらい。「今月のお話」では博愛や愛国心の訴えに拍車がかかり、「統一され解放されたばかりのイタリア」を守っていってほしいという著者の切実な想いが溢れている。特に有名な『母をたずねて三千里』での盛り上がりは本編を圧倒する。2021/09/23
Willie the Wildcat
89
楽しみだった『母を訪ねて三千里』。記載主要5都市の行程をググる。直線距離で約12,360キロ、3,169里。他者に笑われても、これをやってみたかった。でもアメデオがいない!?さて本編。主人公の日記、それに対する両親の返信、そして様々な物語という構成。少々Nationalism色が強いと感じる場面が多々あり、『あとがき』の著者の経歴を見て納得。表題も腹に落ちる。踏まえると尚更、鍛冶屋の息子プレコッシがメダルを授与した件が印象的。親を思う子の心、それを見守る周囲の温かみ。古き良き時代、ふっと感じる寂しさ也。2020/03/22
Miyoshi Hirotaka
32
小国に分裂していたイタリア半島が統一運動や独立戦争を通じてイタリア王国となったのは19世紀後半。舞台となったミラノは子供が煙突掃除をしたり、母親が中南米に出稼ぎに行ったりと経済的に劣悪な環境だった。11歳の男の子の視点で日常生活のエピソードが語られ、それに対する家族の忠告、今月のお話という三部構成で一年が描かれる。物語は、家族の愛、友情、勇気、自己犠牲、英雄への敬意、愛国心、弱者への博愛というクオーレ(心)を描く。どの国にも国民を創生するプロセスがあった。『母を訪ねて三千里』はその挿入話のうち一つの再話。2025/01/11
takaya
26
19世紀後半のイタリア・トリノの小学校の一年間を少年の目を通して描いています。当時の道徳観、人々の生活などがよくわかり、とても興味深かったです。1970年代の日本で人気だったアニメ「母を訪ねて三千里」の原作も、道徳的な話として挿入されています。非常に新鮮な読書経験でした。 2020/11/03
混沌工房
19
《再読》初読は小学生のとき、岩波少年文庫にて。もう一度読みたいな~と思っていたら、はからずも岩波文庫にて再会。小学生の頃、何度も読み返していたせいか、エピソードのほとんどをおぼえていた!! 反面、両親や姉の書き込み箇所はほぼおぼえていなかったけど。今読むと、両親や先生を尊敬し、軍人たちに感謝し、よく働きよく勉強し…といささか説教臭い。好きなのは、聴覚障害を持つ少女と、外国に出稼ぎに出ていた父親の、数年ぶりに再会のエピソード。2019/12/26