出版社内容情報
「夜の闇の中に橋を架ける必要がある」――夜空にひそむ美と脅威、人間の責務と幸福とのせめぎ合いを描く『夜間飛行』。アフリカ・南米航路の開拓者たちの命がけの挑戦や、現地の人々の気高さを語る『人間の大地』。生涯、飛行士として飛び続けた作家が、天空と地上での生の意味を問う代表作二作。原文の硬質な輝きを伝える新訳。
内容説明
「夜の闇の中に橋を架ける必要がある」―夜空にひそむ美と脅威、人間の責務と幸福とのせめぎ合いを描く『夜間飛行』。長距離航路の開拓者たちの命がけの挑戦とその気高さを語る『人間の大地』。天空と地上での生の意味を問う飛行士=作家の代表作二作。
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
95
サン・テクジュペリの「夜間飛行」は中学時代から何度も読んできています。今回岩波文庫に「星の王子さま」と同じように収められました。ただ、今回の訳は野崎歓先生の訳で非常に読みやすくはなっています。ただ私はこの「夜間飛行」も「人間の土地」も堀口大学訳に比較すると緊迫感が若干薄れているような感じがします。さらっと読めて、いい訳ではあるのですが、南米の山岳地を越えて郵便を運ぶ飛行機操縦士とその上司の使命感や自然との厳しい闘いがもう少し出てもいいのではないかと思いました。2025/06/02
yapipi
16
少なくとも今年新たに読んだ中では一番印象深かった。二つの物語のキーワードは「精神」✕「大地」→「人間」。精神が大地に根差すことで人間が出来るのだ。例えば、砂漠で死の一歩手前で仲間と分け合った一個のオレンジ。その木が根を張り実を結ぶならオレンジにとって真実だ、と書いている。著者にとって飛行機乗りは大地に根を張ることだった。精神や命さえも共有する仲間も出来た。もし精神を忘れて生活のためだけに生きるのであれば、何も人間である必要はない、著者はそこまで言ってるように私は思う。さらに深い真実を本書から探したい。2025/08/09
どら猫さとっち
12
「星の王子さま」の著者が、第二次世界大戦前夜に記した希望の書。以前新潮文庫版で持っていて、読まずじまいになっていた。「人間の大地」は、光文社古典新訳文庫で別の方の新訳で読んだ。身の危険をさらしてまで、空を飛び続けた彼は、生きる意味を問う本書を世に送り、81年前行方不明となった。彼が生きていたとして、この世は本書のような希望にあるか。それとも殺伐とした世間を嘆き、尚も希望を紡ぎ続けるのか。今、新たに野崎歓訳が登場したことに感謝したい。2025/08/11
イータン
8
『人間の大地』はやはり「「精神」だけが、その息吹が粘土の土の上に通うならば「人間」を創造することができる。」という最後の一文がすごく肝になっていると思う。 定期路線を飛行しているとき農夫を見て感じたこと、リビア砂漠で彷徨ったときのこと、戦時中フランスからパリに移送されるユダヤ人の人やその子供を見て感じたこと。どのエピソードも飛行機を通じて作者が体験し考えたものばかりで、大地に根付いた人間たちの物語なんだなと感じることができた。心に刺さる名言も多いし自分は『人間の大地』が好きだなあと改めて思いました。2025/07/20
yuma6287
8
フランス生まれの人間讃歌。表題の二篇が収録されている。夜間飛行は黎明期に夜空をかけた人間の思いを語り、人間の大地は空を駆け抜けて得た真理を語る単話である。フランス文学の命脈を引き継いだ言葉遣いと、職業飛行士の経験から得た心理が心に刺さる。訳者解題は原作者の経歴も補完しており、楽しめる1冊です。彼の経歴も相まって、人生を見つめ直す良い機会となりました。文中に突如出てくる修飾表現が読みにくくさせているが、何故危険な道を歩むのか、人間が人間足りうる条件とはといった独自の経歴が生み出した本質はここでしか味わえない2025/07/16