出版社内容情報
「夜の闇の中に橋を架ける必要がある」――夜空にひそむ美と脅威、人間の責務と幸福とのせめぎ合いを描く『夜間飛行』。アフリカ・南米航路の開拓者たちの命がけの挑戦や、現地の人々の気高さを語る『人間の大地』。生涯、飛行士として飛び続けた作家が、天空と地上での生の意味を問う代表作二作。原文の硬質な輝きを伝える新訳。
内容説明
「夜の闇の中に橋を架ける必要がある」―夜空にひそむ美と脅威、人間の責務と幸福とのせめぎ合いを描く『夜間飛行』。長距離航路の開拓者たちの命がけの挑戦とその気高さを語る『人間の大地』。天空と地上での生の意味を問う飛行士=作家の代表作二作。
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
94
サン・テクジュペリの「夜間飛行」は中学時代から何度も読んできています。今回岩波文庫に「星の王子さま」と同じように収められました。ただ、今回の訳は野崎歓先生の訳で非常に読みやすくはなっています。ただ私はこの「夜間飛行」も「人間の土地」も堀口大学訳に比較すると緊迫感が若干薄れているような感じがします。さらっと読めて、いい訳ではあるのですが、南米の山岳地を越えて郵便を運ぶ飛行機操縦士とその上司の使命感や自然との厳しい闘いがもう少し出てもいいのではないかと思いました。2025/06/02
イータン
8
『人間の大地』はやはり「「精神」だけが、その息吹が粘土の土の上に通うならば「人間」を創造することができる。」という最後の一文がすごく肝になっていると思う。 定期路線を飛行しているとき農夫を見て感じたこと、リビア砂漠で彷徨ったときのこと、戦時中フランスからパリに移送されるユダヤ人の人やその子供を見て感じたこと。どのエピソードも飛行機を通じて作者が体験し考えたものばかりで、大地に根付いた人間たちの物語なんだなと感じることができた。心に刺さる名言も多いし自分は『人間の大地』が好きだなあと改めて思いました。2025/07/20
yuma6287
6
フランス生まれの人間讃歌。表題の二篇が収録されている。夜間飛行は黎明期に夜空をかけた人間の思いを語り、人間の大地は空を駆け抜けて得た真理を語る単話である。フランス文学の命脈を引き継いだ言葉遣いと、職業飛行士の経験から得た心理が心に刺さる。訳者解題は原作者の経歴も補完しており、楽しめる1冊です。彼の経歴も相まって、人生を見つめ直す良い機会となりました。文中に突如出てくる修飾表現が読みにくくさせているが、何故危険な道を歩むのか、人間が人間足りうる条件とはといった独自の経歴が生み出した本質はここでしか味わえない2025/07/16
gu
3
まず実人生が凄い。人間性の剥奪(産業による、国家による)に抗して「生きること」を実践し語るサン=テグジュペリの言葉は現代にも届く射程を持ち、冷たさ(厳しさ)と熱さの混じった魅力がある。空と砂漠を書くことそのものが冒険だ。2025/07/19
梅子
2
飛行機乗りのロマンと管理職の悲哀みたいなものが交互に展開される『夜間飛行』は、詩的な情景描写と過酷な自然からの殴打、シビアな判断が求められ続けるところなんかが山岳小説に近い。飛行機愛が炸裂してて、作品の背後から作者の姿がぼんやり浮かび上がるくらい。『人間の土地』はより詩的で哲学的なエッセイ集のような感じ。当時はまだ珍しかったパイロットの視点を追体験できる面白さや仕事にかける情熱に共感してベストセラーになったのだろうが、今この作品を好意的に受け止められるかは人によるだろう。「きれいすぎる」が私の感想。2025/07/20